2017年度 第2回勉強会

SNSと情報モラル~情報社会のあるべき姿~

高橋暁子氏(ITジャーナリスト)


 48日、日吉キャンパスにて「SNSと情報モラル~情報社会のあるべき姿~」というテーマのもと、SNSや情報リテラシー教育に関する執筆活動、講演やセミナーなど幅広い分野でご活躍されているITジャーナリストの高橋暁子氏をお招きし、勉強会を行いました。日本の若者のSNS利用に関する様々なデータを取り上げ、誰にでも起こりうるSNS被害について考えました。

 

講師略歴


 Webサイトの編集者などを経て独立、現職。執筆活動、コンサルタント、講演、セミナーなどを手がけるITジャーナリストで、SNSや情報リテラシー教育に詳しい。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など著書多数。SNSやスマホの安心安全利用等をテーマとして、テレビ、雑誌、新聞、ラジオ等のメディア出演経験あり。

 

SNSを利用するリスク


 

SNSを利用する大きな危険性として、不用意な投稿に起因する炎上が挙げられる。ネット社会には他人を炎上させようと目論むユーザーもいるため、注意が必要である。アカウントに匿名性を持たせているつもりでも、ブログや複数のSNSのアカウントから情報が集められ、個人情報が特定・流出させられてしまうこともある。他にも、SNSを利用したいじめ、デマの拡散などが問題となっている。これらの問題はメディアでも大きく取り上げられ、SNSの危険性として広く認識されている。しかし、自分がSNSを利用する際にはその危険性をあまり意識していないという人が多いのではないだろうか。

 

若者のSNSへの異常な執着


 

今日、学生に「あなたは、家にスマートフォンを忘れたら取りに戻りますか?」という質問をすると、多くの学生が「スマートフォンを取りに戻る」と回答する。現代において、若者の問題とされているのは、SNSへの依存である。アンケート調査によると、現代の若者はテレビやパソコンを見る時間よりも、スマートフォンを手にしている時間の方が長い。このように、多くの若者はSNSに依存して生活をしている。

 

さらに恐ろしいことに、多くの若者は無意識のうちにSNSへの依存度を高めている。例えば、スマートフォンのカメラで自分を撮影することに過剰な意識や時間を費やす「セルフィー依存症」が挙げられる。このような問題の原因は、若者が「美しい写真や、充実した私生活をどれだけ多くの人々に高く評価してもらえるか」ということに異常な執着心を持っている点にある。これはSNS依存の極端な例と言えるが、写真を撮るときにSNSを意識する人は少なくない。むしろ、写真を撮ることではなく、SNSに公開することを目的とする若者は多いのである。現に、アンケート調査によると、「SNS上で自分をよく見せたいと思う」と答えた若者が全体の半分を占めている。このように、今日のSNSに潜む危険性は、誰しもが「無意識に」SNSに依存する可能性があるということである。

 

SNSの可能性


 

SNSというワードがメディアに取り上げられる場合、多くのケースがいじめトラブルや個人情報の悪用、炎上問題などのネガティブな印象を与える事件である。確かに、SNSの使用には様々な危険性やデメリットがあり、SNSによる被害は絶えない。しかし、SNSは個人の使い方次第で非常に便利なツールとして、私たちの暮らしを豊かにすることを忘れてはならない。正しいSNSの使い方を理解することで、本来のSNSの素晴らしい一面に気付くことができる。

 

例えば、Twitterの検索機能をどのように活用するかという問題が挙げられる。現在では検索機能が向上し、少しの情報で個人を特定することができる。そのため、Twitter上で個人がどこまで自分の情報を公開するのかという点では、掲載する情報を判断・選別することで、特定の相手だけに自分を探してもらうことができる。この機能は、個人の仕事や趣味などの活動の場を大きく広げ、通常の私生活では接点を持たない人々と出会う可能性を与えてくれるものである。このように、個人がSNS利用におけるモラルを理解し、情報を適切にコントロールすることができれば、SNSは非常に便利なツールとして機能するのである。

 

質疑応答


 

Q1.親が子どもにスマートフォンを持たせる年齢について、どのようにお考えですか。

A1.子どもがスマートフォンを使用するメリットが、デメリットを上回る時期に持たせるのが妥当です。子どもがどうしてもスマートフォンを所持したい場合は、本人がスマートフォンの使い道や使用上のルールなどを自ら考え、親にプレゼンテーションし、購入を説得するのも良いと思います。

 

Q2.SNS上で知り合った相手と会う時、どのようなことに気を付けるべきですか。

A2.実在する人物かどうかを事前にできる限りリサーチし、当日は日中に複数人で、人通りが多い場所で会うことを心掛けるべきです。そして、どこで、どのような人に会うのかを親に伝えておくことも大切です。

 

Q3.SNS上での、どのようなトラブルに気を付けるべきでしょうか。

A3.中高生は、特に投稿した内容の炎上やネットいじめに巻き込まれないように気を付けるべきです。また、最近は大人の「SNS疲れ」も増加しており、ネット上のコミュニケーションへの気遣いをしすぎないことも大切です。

 

所感


 

今日ではSNSの利用者層が小学生や高齢者にも広がっていますが、多くの人がSNSの背後にある危険性に目を向けることなく、SNSを使用している現状があることを知りました。私たちが想像している以上にSNSの問題は身近に起こりうるものであり、誰もが被害者や加害者になる可能性を忘れてはならない事を再認識しました。

 

次回は、「学校は中学生以下のTwitterの使用を禁止すべきである。是か非か。」という論題のもと、ディベートを行います。今回の講演でもお話しいただいたように、SNS使用におけるモラルが中学生以下に備わっているのかという点が大きな論点になります。学生である私たちや、子どもたちの親、情報を閲覧する若者などの様々な視点に立って、Twitterの使用に伴う問題を検討していきたいと思います。

 

 

 今回ご講演くださいました高橋暁子様、ありがとうございました。

 

文責 栗山奈々美