2月9日、オリンピックセンターにて「農業の今~若者が担い手となるために~」という演題のもと、博報堂ショッパーリテールマーケティング局の勝又多喜子氏をお招きし、グループAの勉強会を行いました。
1969年千葉県に生まれ、幼少期をモスクワで過ごす。早稲田大学商学部卒業後、1992年に「観劇空間」づくりに携わりたいという思いと、異文化で育ったたくましさを武器に博報堂に入社し、営業や研究開発を経験。研究開発職では、食また、子育てと介護の両立という経験から女性のワークライフバランンスなどを中心に研究、、その後、二年間官民交流制度で農林水産省経営局就農・女性課に出向し、新規就農者に関する広報や農業女子プロジェクトを手掛けられました。現在は、博報堂ショッパーリテールマーケティング局リテールマーケティング一部ビジネスプロデューサーを務められています。
現在の日本の農業は広告業と同じく右肩下がりです。それでも、広告業よりもずっと大きな市場を維持しています。また、農家の戸数215.3万戸とあり、この中でも農業従事者数は168万人とかなり大きな数字に感じられます。そのため、数字だけを見ると多いと思われるかもしれませんが、実際は農業従事者数の63%が65歳以上であり、日本の農業の高齢化は著しく進んでいるといえます。
日本の農業の高齢化により、あと10年もすれば65歳以上の106万人もの従事者の大半は離農してしまうと言われています。そのため、40代以下の若手の従事者を増やす必要性が高まっています。政府はその対策として、新規就農者を増やすための取り組みを推進しています。その一つとして、経営体としての強化を図るために、法人化を推奨しており、実際この10年で法人の数は2倍以上に増加しています。
勝又氏は“『農業』を職業選択肢のひとつに”というキーワードのもと、日本女子体育大学で講演会のセッティングや、店舗毎にターゲットを意識し、各書店に農業関連の本のコーナーを設けることにより、新規就農者を増やすことを手掛けました。また、女性に特化したプロジェクトとして、農業女子プロジェクトを立ち上げられました。このプロジェクトには「社会、農業界での女性農業者の存在感を高める」、「女性農業者自らの意識の改革、経営力の発展を促す」、「若い女性の職業の選択肢に農業を加える」という三つの目的があり、女性農業者が知恵を出し、企業が資金を出し、新しい商品やサービスを生み出すという活動です。
Q1.大学生活の活動の中で、農林水産省に出向した際に役立ったことはありますか。
A1.大学時代の4年間というよりは、博報堂での20年間の方が役立ったように思います。ただ、早稲田大学商学部で地方出身の方と多く知り合えたため、出向した後に様々な地域を訪れる際、親しみを持ちやすかったです。
Q2.農業女子プロジェクトの今後の展望を教えてください。
A2.出向から戻ってから一年半が経ち、私は直接はプロジェクトに携わっていません。しかし、後任の方とよく話していて思うこととして、現在は女性の労働環境の改善に重きが置かれてしまっているので、私はむしろ農業全体を社会に発信することに力を入れたらもっと良くなると思います。
Q3.農業女子プロジェクトとコラボする企業はどうやって集めましたか。
A3.博報堂が「チーム・マイナス6%」を進める際に様々な企業に協力を仰いだことと同じように農業女子プロジェクトも多くの企業とコラボしたいと思いました。
またこういったことは大抵最初の5社が決まれば他の企業も集まってくるので最初の企業選びを重視しました。中でも自動車会社や化粧品会社などが参加してくださったことは大きかったです。
Q4.若者が就農したがらない理由として、農業のイメージが悪いことが挙げられますが、改善策はありますか?
A4.実際農業従事者の年収は低いですが、実は家賃や食費がかからないんど、所得が多くなくても生活に不自由がないことをもっとアピールするべきだと思います。
後継者不足や就業者の高齢化などを背景として、日本の農業が衰退しているということは新聞などで目にしていましたが、農業というのはどこか自分とは違う遠い世界の話というイメージがありました。しかし、今回のお話を伺うと、これからの農業は自分たち若者の世代こそが必要とされており、もっと身近な問題として向き合っていかなければいけないというということを強く感じました。
今回ご講演いただきました勝又多喜子様、ありがとうございました。
文責 今西敦樹