10月7日の定例会では、文部科学省高等教育局高等教育企画課国際企画室専門官の佐藤邦明さんをお招きし、日本における大学のグローバル化、グローバル人材の育成についてご講演いただきました。
佐藤氏は、当時としては画期的な全ての授業が英語で行われるというシステムを取り入れた、秋田県の国際教養大学の設立に携わり、その後大学の国際化、グローバル人材の養成に向けて活躍されている。
はじめに佐藤氏は「どうして今、大学のグローバル化が必要なのか」ということに対して経済界からの観点を説明された。具体的には「日本の市場がこれから縮小していくなかで、今以上に中国を中心としたアジアでの売り上げの増加が必要となる。そのために、企業側としても語学や価値観をはじめとした国際感覚を持ち合わせた人材を確保することが急務である」と述べられた。
また昨今の日本で叫ばれている、留学や外国に行きたがらない若者を指して使用される言葉である「若者の内向き化」に関しては「過去と現在の統計を比較すると、人数自体は減少しているが同世代に占める留学者数の割合は変化がなく、若者の絶対数が減少したにすぎない。したがって留学者数の増減だけを基準に若者が内向きしていると断定することはできない」と説明された上で、「現在若者の中で進行しているのは、グローバル意識の二極化である」と指摘された。
さらに、日本からの留学生の増加を妨げている要因として①留学から帰国後の就職活動における問題②留学資金や学費などの経済的問題③大学のバックアップ体制の不足といった3つの問題点を挙げられ、企業が就職活動の時期を遅くすることや、大学の留学希望生に対して奨学金などの経済的援助を行うこと、さらには大学での単位の相互取得制度などの充実させることによって状況は大きく変化するだろうとおっしゃった。
最後に、定義があいまいなものとなりがちで、抽象的な「グローバル人材」という言葉の意味するところとして、①相手を説得し議論するためのツールとしての語学を含めたコミュニケーション能力②主体性や積極性、協調性といったマインドセット、③日本人としてのアイデンティティの保持と常識に縛られず相手の国の文化を理解できる多様な価値観といった、3つの能力を持つ人間であると指摘され、メンバーたちに、少子高齢化が進み日本の市場が縮小していくことが明らかである現在、これから自分たちがどのような社会を作っていきたいのかを考えて行動してほしいとおっしゃった。
さて、今回は「大学のグローバル化、グローバル人材の育成」ということをテーマに佐藤氏に講演をお願いしたが、メンバーの中には海外でインターンシップや短期・長期留学を経験しているものから、海外へ一度も行ったことがない者までいるため、講演から得たもの、感じたことも様々であっただろう。しかしながら、佐藤氏が述べられたように、日本の内需が拡大することが見込めない今、日本は国際化という荒波を乗り越えなくてはならない。そこで、私たちは国際的に通用する「グローバル人材」へとなるために、大学生時代に何をすべきかということを常に意識する必要があるだろう。
佐藤邦明さん、本当にありがとうございました。