9月25日、Web会議サービスであるZoomにて第3回事前学習が行われました。これから学ぶテーマは「マジョリティの社会で働く ~マイノリティ×労働~」です。今回の定例会では、このテーマの事前学習を行いました。
注:このレポートでは、通常「障がい者」と表される方々を「障害者」と表記しています。これは「障害を持っている人が障がい者である」という従来・一般的になされる考え方ではなく、「障がい者は現代社会の障害と向き合う人である」という意味の用法として使用しています。
近年、マイノリティの権利が保障されるようになったという事例を耳にする機会が増えました。しかし一方で、向精神薬を服用しているという理由だけで退社させられるなど、特に雇用の場において、マイノリティへの理解がなされていない事例も数多く存在しています。このようなマイノリティの人達に支援が広まらない理由について、ブレイクアウトルームを用いて班ごとに分かれて議論を行いました。その結果、マイノリティに対するマジョリティの共感不足や、それに起因する価値観の押しつけ、更にマイノリティが苦しんでいることを見過ごすような風潮が原因なのではないかという意見が出ました。また、これらの解決策として適切かつ十分なコミュニケーションを通じた他者理解の深化が挙げられました。
差別是正を目的とした法律として、障害者差別解消法と障害者雇用促進法の2つの法律を学びました。前者は、事業者に対して障害を理由とした差別を禁じたものです。しかし、障害者に対する直接的な差別が禁止されている一方で、結果的に差別に結びつくような間接的な差別(動物同伴を理由とするご入店お断りなど)は禁止されていないという不十分性が問題点として指摘されました。また、行政機関等では法的義務である配慮についても、事業者の場合は「合理的配慮」としての努力義務にとどまり、法的拘束力が限定的である点も課題となっていることを確認しました。
後者は、従来の法律が「障害があるのは人である」としてきた前提を「障害があるのは社会である」という前提に切り替えた点が大きな特徴です。法的雇用率を定め、事業主が雇わなければならない障害者の数を定義しました。しかし近年、官公庁による障害者雇用数の水増しが発覚したように、その有効性を疑問視する声も上がっています。さらに、障害者の離職率は依然として高いままであり、継続的な雇用については考慮できていないという点も課題として指摘されました。
次に、行政や民間、規模の大小を問わずに比較できる障害者の雇用率のデータをもとに、班ごとで障害者の雇用率の推移と現状について議論しました。その結果、民間企業に先立って手本となるべき司法機関での実雇用率の低さや、達成している企業の少なさが問題点として挙げられました。ここから、実態が法律に追いついていないことがわかります。
また、グラフについても、一見雇用率が著しく改善しているように見えても、数値を確認するとあまり雇用率は上昇していないということが分かり、印象を意図的に操作しているのではないか、という指摘もありました。
先述したように、障害者の早期離職もまた大きな問題となっています。特に顕著なのが精神障害者で、彼らが入社後3ヶ月で離職する確率は50%を超えています。また厚労省によると、社会全体の勤続年数平均は12年である一方、身体障害者は平均10年、精神障害者は平均3年と平均と比べても大きく差が出ています。このデータから、就職しても様々な理由で仕事を継続できず、離職する障害者が多く存在することがわかります。この原因として、障害者に対する職場の理解が十分でないことが考えられます。
障害者の権利を保障するために様々な法律が制定されている一方で、その理想と現実は大きく乖離したものであることが分かりました。単純に法律を遵守する企業が少ないだけでなく、そもそも法律が定義している配慮の範囲が狭いことなど、多様な面での課題が浮き彫りとなりました。次回以降のリフレクションでは様々な企業の取り組みを参考にして、社会的マイノリティを含む全員が活躍できる社会の実現を目的とする職場環境モデルを提案します。
マイノリティの人達が社会で働く困難さを知り、社会的マイノリティを含む全員が活躍できる社会の実現のために、そしてリフレクションに向けて話し合いをするのが楽しみです。また、後期初回の活動ということでこれから半期頑張りましょう。
文責:青木 英斗、木村 太郎