5月22日、日吉キャンパスにて第2回事前学習が行われました。前回に引き続き「若者の政治参画と選挙制度」をテーマとして、ファシリテーション形式で、本テーマについて日本の現状と今後の展望を考察しました。
昭和42年から平成26年の衆議院総選挙投票率の推移を有権者の年代別にみると、50代以下のすべての年代で大きく減少しており、特に20代に関しては平成26年は32.58%と昭和42年以来最低でした。この年の総選挙は、有権者全体としての投票率も52.66%と、戦後最低と言われた前回の平成24年の59.32%を大きく下回る結果となりました。投票率低下の傾向は国政選挙だけでなく、知事選挙・都道府県議会議員選挙・市区町長選挙・市区町村議会議員選挙などといった地方選挙にもあらわれています。
5月17日に行われた「大阪都市構想」の是非を問う住民投票では、賛成約69万票に対し、反対約70万票で、同構想は否決されました。しかし、ニュースなどで紹介された世論調査の結果を見てみると、60代以下のすべての年代で賛成の意見の比率が高く、今回の住民投票では、反対の比率が高かった70代以上の府民の意志が強く反映されたことになります。投票数に対する高齢者が占める割合が高いため、高齢者の意見が強く政治に反映されやすい状態はシルバーデモクラシーと呼ばれています。現在の日本がそのような様相を帯び始めている原因は本当に高齢化だけなのでしょうか。
ここで仮想実験による検証をしてみました。もし、全世代で投票率が100%だった場合、賛成約120万票・反対約100万票で同構想は可決されていました。また、投票率100%はあまりに現実的ではないものなので、先ほど示した戦後最低の投票率を記録した平成26年の衆議院総選挙投票率を年代別にそのまま反映させてみると、賛成約63万票・反対約57万票となり可決されます。この結果から考えると、現代日本のシルバーデモクラシーは、単に高齢者の人口割合が高いことだけではなく、高齢者と比べて若い世代の人の投票率が低いことが原因となっていることがわかります。
近年のインターネットの普及を鑑みて、候補者に関する情報の充実と有権者の政治参画の促進を図るため、平成25年にインターネット選挙運動解禁にかかわる公職選挙法の一部が改正されました。これによって、WEBサイトの利用解禁・電子メールの一部解禁・SNSでの特定の候補者への投票の呼びかけ解禁(候補者以外の人のみ可能) などが実現しましたが、ネット選挙に対応した平成23年の参議院選挙では投票率は52.61%にとどまり、解禁直後のネット選挙においては、投票率への著しい影響は見られませんでした。
それでは、どうすれば有権者、それも特に若い世代の人々の投票率を向上させることができるでしょうか。ここで、ネットでの選挙運動の解禁からさらにもう一歩踏み込んだ、「ネット投票」が解決策の一つとして提示され、各テーブルでこれについての意見を出し合いました。
ネット投票に肯定的な立場の人からは以下の意見が挙げられました。
・地方から籍を移さずに、大学や仕事に来ている人々が投票しやすくなる
・ネットの普及から具合からみて「ネット投票」の導入は自然なことだ
・若者がはじめは興味をもっていなくても、ネット投票を通じて政治への関心が芽生えるのではないか
一方、ネット投票に否定的な立場の人からは以下の意見が挙げられました。
・投票がクリックするだけで完了してしまうので、有権者は熟考することなく、投票してしまうのではないか
・ネット投票とまでいかなくても、コンビニ投票などの他の選択肢をとることはできる
また、そもそも現在において選挙に行っていない人(主に若者)を選挙に行かせる必要は本当にあるのでしょうか。これに対する意見としては以下のものが挙げられました。
・若者のほうが高齢者より余命があり、その意見はより長期にわたって有効
・若者が政治に関心がなくなれば、将来において日本は没落してしまう
・政治に関心のない人の意見を尊重する必要が本当にあるのだろうか
・そもそも政治に全く関心のない人などいない
次回のリフレクションでは、「若者の投票率を向上させるためにネット投票を導入することは相応しい政策かどうか」「若者の投票率を向上させることは日本の政治にとってプラスかどうか」の2点を中心として、肯定側、否定側に分かれディベートを行います。
今回の事前学習で学んだことをもとに、「リフレクション」「勉強会」を通じて、さらにこのテーマについて理解を深めていきます。次回は6月5日にリフレクションを実施し、6月12日にはNPO法人Youth Create代表の原田謙介氏と東京都中野区区長田中大輔氏をお迎えして、トークセッション形式でご講義いただきます。
文責 杉本知穂