10月24日、日吉キャンパスにて第5回事前学習が行われました。これから3週間かけて学ぶテーマは「食生活の変化と健康問題」です。「食生活の変化と健康問題」について、日本の現状とこれからどうあるべきかを考えました。
今回は、2年生の岸本と宮村によるファシリテーション形式で「食生活の変化と健康問題」について学びました。以下はその内容です。
私たちは1日のうち、朝食、昼食、夕食という形で食事を摂ります。そして、3回の食事にはそれぞれの役割があります。
朝食
睡眠によって不足した糖質を補給し、糖の充足から午前中の脳を活性化させるため
昼食
基礎代謝に伴うカロリー消費によって欠乏した炭水化物などの栄養素を補給し、午後の活動のエネルギー源にするため
夕食
日中の活動による脳や筋肉の疲労を回復させ、成長ホルモンの生成を促すための栄養をとるため
このように一日三食摂ることは心身の健康のために重要であるにもかかわらず、データによると20代の朝食の欠食率が男性29.5%、女性が23.6%と他の年代と比べても顕著であることがわかりました。また、小学6年生と中学3年生を対象とした別の調べでは、朝食の摂取と学力調査の平均正答率との関係から、朝食を食べる学生は学力調査で良い成績を出す傾向にあるということが明らかになりました。
コンビニの普及と食品加工技術の向上により、加工食品は私たちにとって身近なものとなっています。そして冷凍技術や運搬能力の向上により簡単で便利に多種多様の食を楽しむことができるようになりました。しかし食の選択肢の多様化や利便性の発展により新たな問題も生じています。偏食、国民全体での健康や栄養状態の偏り、伝統的な食事・食事作法の消失などです。
このような問題が生じている現代に生きるからこそ、食べることの目的・価値をもう一度見つめなおすべきなのではないでしょうか。
近年は不規則な食生活や睡眠、飲酒や喫煙、対人関係や社会内のストレスなどを原因とした生活習慣病の患者が増えています。肥満、高血圧、循環器病などがそれに含まれます。これらの生活習慣病が一度に起きるのではなく、時間を追ってドミノ倒しのように発症する様子は、メタボリックドミノとも呼ばれています。現在生活習慣病は死因の約6割、国民医療費の約3割を占めています。日本の医療費は年々増加を続けており、その削減は急務です。
このことからもわかるように、生活習慣病は個人の問題だけではなく、国家全体で取り組むべき問題なのです。
国民一人ひとりの健康を増進するために、国家も取り組みを始めています。厚生労働省が掲げる、国民の健康増進を図る基本方針「健康日本21」が例として挙げられます。「健康日本21」では栄養と身体活動並びに休養の充実、飲酒や喫煙の減少、こころの健康などが促進されていますが、これはあくまでも国全体のアウトラインにすぎません。このような国全体としての指針作りと同時に、健康増進法による受動喫煙の防止など、立法による取り組みも進められています。
その他にも国民の栄養摂取並びに生活習慣の状況を調査する国民栄養調査、健康のための身体活動基準と身体活動指針づくりなど、国民の健康促進のための政策は多くあります。また、国民の健康の浸透に向けて、食生活の面からの取り組みも進んでいます。平成18年には食育推進基本計画が策定され、生活習慣病の予防および改善、伝統としての食文化の保存が図られました。
今後日本では高齢化の進展とともに国民の健康問題への関心がより高まってくると思われます。健康寿命の延伸と健康格差の縮小に向けて国は日々策を講じ続けなければいけないでしょう。
その中で、食育、体育を含む「五育」を基本とする生活ガイドラインなど、健康と深い関わりを持つ食についての取り組みはますます重要になってくるのではないでしょうか。
今回の事前学習で学んだことをもとに、「勉強会」「リフレクション」を通じて、さらにこのテーマについて理解を深めていきます。
そして次回は10月31日、合同会社五穀豊穣代表の西居豊氏をお迎えして、ご講義いただきます。
文責:森田健人