2014年度 第4回事前学習

労働市場と働くということ


 9月25日、日吉キャンパスにて第4回事前学習が行われました。これから3週間かけて学ぶテーマは「労働市場と働くということ」です。「労働市場と働くということ」について、私たちは日本の理想とする社会を「労働市場での各仕事分野での需要と供給がマッチする社会」と設定し、日本はこれからどうあるべきかを考えました。

 

 今回は、2年生の岸本と宮村によるファシリテーション形式で「労働市場と働くということ」について学びました。以下はその内容です。


日本の労働にまつわる問題


 労働とは体を使って賃金・報酬の為に働くことを指しますが、そこで様々な日本での労働にまつわる問題点が示されました。労働と時間の関係で度々問題視されているのがサービス残業や過労死です。また格差の観点では正規雇用者と非正規雇用者の間の格差、ホワイトカラーとブルーカラーの間の格差、所得の格差(関連して年収200万以下の人々を指すワーキングプアが1000万人、生活保護受給者が200万人もいる問題)が問題となっています。

 

 また、失業率に強く相関して自殺数は動向し、経済格差は教育格差にも関係しています。そして日本の最低賃金は世界的に先進国の中で低いというデータはみなを驚かせました。さらに、ブラック企業の話題も取り上げられましたが、そこでは業務内容や賃金報酬額などの実際のデータから、ブラック企業の概念自体をグループディスカッションを通して捉えなおしました。また、最低賃金と関連してブラック企業とはなんなのかについてグループディスカッションをしました。

 

その結果、

・課せられた仕事とは割に合わない賃金設定をしている企業

・同じ業界の他社と比べてきつい業務内容になっている企業

・たとえ最低賃金を賃金として設定していても合法なのだから、ブラック企業とするのは筋違いなのではないか

 

などといった意見が見受けられました。


大学生の労働と仕事


 一般的な大学生は働くということに具体的なイメージを持てていません。そのため、今回の事前学習では大学生に身近な仕事であるアルバイトについて再考することで、働くということを見つめなおしました。その中で、「アルバイトを決める上で何を基準に決めるか」についてグループディスカッションをしました。その結果、

 

・賃金が高いこと

・自分のやりたいことであること

・勤務地

・業務内容にやりがいを感じること

 

などの意見が出ました。


労働市場の問題


 これから就職活動をして働いていく大学生にとって特に重要な労働に関する問題が労働市場における問題です。そこには自殺や過労死といった既述の問題がありますが、これから職に就く大学生からすれば、労働市場の各仕事分野における需要と供給のバランスの問題が最大の懸念事項でしょう。


 バランスを表す指標として有効求人倍率(求人数÷求職者数で算出される。1を超えれば人気がない職種、超えなければ人気がある職種といえる)があります。分野別に見ていくと営業職、建築土木職、サービス・接客職、調理職、社会福祉職、ITエンジニア職の有効求人倍率が1を超えており、人手不足の状態であると言えます。特に建設業界では2.6倍、介護業界では1.9倍と高い数字を示しており、事態は深刻です。逆に販売職、クリエイター職、事務職の有効求人倍率は1を下回っており、特に事務職では0.23倍となっていて仕事不足となっています。このように各業界で需給のバランスに差があり、仕事不足の業界がある一方で人手不足に苦しむ業界があるという、矛盾した状態になってしまっているのです。


 その理由としては情報の非対称性(メディア等を介して求職者に届く情報に、業界による格差が存在すること)や選好、求人側の求める能力の差異などが挙げられます。その解決方法としては、転職がしやすい環境・制度の整備や終身雇用にこだわらない雇用の流動化が挙げられました。


「働く」とは


 最後に、「働くとは何か」「仕事を選ぶ際に何を重視するか」についてグループディスカッションを行い、事前学習を締めくくりました。その結果、

 

・やりたい、やれる、やらなければならないの3要素が組み合わさったものが仕事

・仕事ではやりがいが一番大切

・仕事で一番大切なのは賃金。自己実現の優先順位はその次である

・個性の発揮が仕事では一番大切

・社会貢献が一番

・たしかに賃金は大切な要素だが、労働の価値はどれだけ人に貢献できるかということだ。賃金はそれに付随するものである

 

といった意見が出ました。


総括


 労働に関して様々な問題があること、特に就職活動に直結する問題として労働市場の問題があること、さらにはこれから先多くの時間を費やす労働とはそもそも何なのかということなど就職活動を控えた大学生にとって考える必要性が高い話題であったと感じました。また、職業を選ぶ際に以上のようなことを意識するかどうかで、各々の選択に大きな差が出るのではないかと感じました。

 

 今回の事前学習で学んだことをもとに、「勉強会」「リフレクション」を通じて、さらにこのテーマについて理解を深めていきます。


 そして次回は10月3日、人材コンサルディング企業の羽田啓一郎氏をお迎えして、ご講義いただきます。

 

文責:杉山希美