本日より、後期の本格的な活動が始まりました。今後3週間は、「スポーツと国民」について理解を深めます。
Front Runnerでは、「日本のこれから」を大テーマとして掲げています。今期は、日本が将来「理想とする社会」を作り上げ、世界を牽引していくために、日本、そして私たちがすべきことを考察していきます。本タームにおいては、理想とする社会を「健康な社会」と設定し、健康な社会を実現するためには、スポーツと国民の結びつきについて掘り下げる必要があると考えました。
10月5日の事前学習では、前期と同様に1班4人のグループに分かれてディスカッションを行い、Case Studyを進めていきました。
2012年はオリンピックイヤーであり、8月に行われたロンドン五輪において、日本は歴代最多である38個のメダルを獲得しました。数々の歴史的瞬間が生まれ、日本国内でも大変な盛り上がりをみせました。本大会における選手団の華々しい成績の裏には、2010年より日本政府の主導で行っていたマルチサポート事業戦略の影響があります。マルチサポート事業戦略とは、我が国がより確実にメダルを獲得するために、トップ競技者などのメダル獲得が期待される者に対して、重点的に支援を行うというものです。この取り組みは、ロンドン五輪において、メダル獲得という成果を着実にあげる一方で、トップアスリートがスポーツのみに専念し特殊な人材となってしまっている点や、競技ごとに支援の偏りが生じている点など、解決すべき問題も抱えています。また、こうした取り組みによってプロ選手への支援は充実してきているものの、市民の参加するスポーツイベントへの投資は割合として減少傾向にあります。
では、スポーツと国民との関係は、本来どのようにあるべきなのでしょうか。ここからは4つの質問に対し班でディスカッションを行った後、班としての意見を発表し全体で共有しました。
質問① 国の支援を受けているトップ層の選手が、国際試合の場で無残な結果に終わった
とき、インタビューの際に「参加できただけでよかったです」とコメントしたと
する。このコメントについて、どう考えるか。
・選手は、出場のために様々なトレーニングを行っており、自身の日々の鍛錬があってこその発言であるため、共感する。
・言葉の使い方やニュアンスにもよるが、日の丸を背負って出場しているのだから、その分成果を出すことが求められるのではないか。選手本人の努力を称える一方で、国の代表としての責任を追及する声も上がりました。次に、国が国民とスポーツに対してとるべき行動について話し合いました。
質問② 国として主体的に行うべきことは、トップ層の支援であるか、それとも市民レベ
ルのスポーツ振興であるか。
・国としての競技力向上を図るために、今行っているトップ支援事業を、プロ選手だけでなくさらに若年層へと拡大するべきである。
・次世代のトップ層となるのは現在の若い世代である。もし才能があったとしても、地域にスポーツを体験できる環境がなければ、次世代のトップ選手を育成することは難しい。まずは国民に平等な機会を与えることが必要である。
・スポーツに興味のない市民に対してやみくもに財を投じるのではなく、トップ層に投資した上でゆくゆくは市民にも波及させていく方がより効果的である。また、トップ選手が活躍することで国全体が盛り上がり、経済効果も見込まれる。国として国民への平等なスポーツ環境を整備するべきだという意見と、支援を必要としているトップ層を中心に資金を投入すべきだという意見、大きく2つの考えが出ました。続いて、国民とスポーツの関係をより深く考えていくために、以下の2つの問いについて話し合いを行いました。
質問③:あなたにとって、スポーツとはどのような存在か。
・仲間と出会うことができる場である。高校時代の部活においては、スポーツを通してたくさんのかけがえのない仲間を得ることができた。
・礼儀や作法、スポーツマンシップなどを学ぶことができるため、教育面において重要である。・自分自身の健康増進や、リラクゼーション、趣味として欠かせない役割を担っている。健康維持という側面だけではなく、仲間との交流の場や、教育の場など、精神的・内面的な側面からも重要であるという意見が出ました。
質問④ 日本にとって、スポーツとはどのような存在か。
・日本の教育や健康を、オリンピックなどのイベントにおいて国力として表現するものである。
・武士道という言葉に代表されるように、日本独自のスポーツやそれに付随するイメージによって、自国の文化を発信する手段となる。
・スポーツのイベントを通し、国としての団結力やナショナリズムを育むものである。
・国民の健康を促進し、医療費や保険料を削減するための政策となる。
・個人競技を得意とする国がある一方で、日本は団結を必要とするチーム競技において好成績を収めることが多い、というように、国民性を表している。
以上の議論を踏まえて、再来週に行われるディベートの議題が発表されました。議題は「日本政府はマルチサポート事業への投入資金をさらに増やすべきか否か」です。今回の事前学習において各自が抱いた疑問点・意見を、来週小笠原様に発信し、より有意義な時間としていきます。以上です。
文責:中山遥