7月5日、日吉キャンパスにて、事前学習や田中友紀様の御講演を通し深めてきたテーマである「教育のこれから〜子どもたちにとって必要な教育とは〜」について、教育の現場を実演する形式でリフレクションを行いました。
事前学習や勉強会を通して、教育を受ける側・教育を施す側の双方から初等・中等教育について考えを深めてきました。そこで、今回は理想とする教育の在り方を理論だけにとどまらずに実演という形で表現するリフレクションを実施しました。8つあるリフレクション班の中で、小学校3班・中学校2班・高等学校3班という配分で各班が発表しました。
以下は各班の発表の内容です。
①国語
「人間力を育てる」ということをビジョンに掲げ、学校に通えていない外国籍の子どもたちが約16000人にものぼるという現状も踏まえ、小学校だからこそ認め合える学びを通して多様性を重視することを理想とした。クラスには担任、日本人生徒に加え、ベトナム出身の生徒とそのサポートを行う担当教師がいるという設定で、授業は宿題で課されていた感謝を伝える手紙を生徒が発表するという内容である。実演ではこの手紙を通して、苦手科目がある生徒の努力を認める、外国人の生徒自身やその母国についての理解を深めるという機会を用意した。
②算数
算数は小学生の好きな科目・嫌いな科目の両方において1位となっており、生徒の間で差がつきやすい科目であるといえる。論理的思考力を鍛える数学の土台となる算数の重要性を考え、子どもたちが楽しんで取り組める授業、そして生徒同士で一緒に問題に取り組む形にすることで、算数が得意な生徒と苦手な生徒が協力し合える授業の形を提案する。授業では加算・減算を用いて答えを導くクイズにグループごとに取り組み、生徒に解法と各人の役割を説明した。
③情報リテラシー
スマートフォンやSNSの普及を踏まえて、情報との正しい接し方を小学生のうちから教えることが必要だと考え、小学5,6年生を対象に「情報リテラシー」という授業を新設することを提案した。授業では実際に問題となったSNS上の投稿を扱いながら、SNSには、「発信」と「受信」の2つの機能があることを説明した。更に各投稿の問題点を説明することで、発信においては他の人に迷惑をかけるような内容になっていないかよく考えた上で責任を持って投稿すること、受信においてはその情報が信憑性のあるものなのかを確認することの注意喚起を行った。
①道徳
以前、ある小学校の道徳の授業で母の無償の愛を通して家族愛について考えるという際
に、他の生徒とは違う意見を持つ生徒はその発言を笑われ涙して終わったという事例につ
いて、挙手制のため少数派の意見を持つ生徒が晒し者になったこと、先生が少数派の意見
を尊重しなかったこと、その少数派の意見についての根拠を考えなかったことが問題となった。そこで、授業では上記の事例と同じテーマを扱い、無記名で意見を書いてもらうことで匿名性を採用し、生徒の意見を授業内容として扱うことで先生による誘導を防ぎ、さらに少数の意見も取り上げることでその価値観についても考えるという形をとった。また、自分とは違う意見についても考えることで新たな価値観を持つことができるということを伝えると同時に、様々な意見を尊重するという多様性の重視についても説明した。
②社会
知識詰め込み型の暗記学習が多く見受けられる社会科の中でも歴史を扱った。受け身な姿勢での授業参加ではなく、生徒が主体的に取り組める授業を理想とする。授業では江戸時代を学習しているという設定だが、生徒にその歴史の背景にあるものに目を向けてもらうため、先生がただ歴史的事実を教えるだけでなく、当時の話を現代に置き換えたり、日常生活にまで落とし込んで具体化しながら考えたりすることで、より実用的な学びとさせることを重視した。また授業内では歴史だけでなく、生徒の主体的な学習姿勢を導くため、そもそもなぜ今学ぶのかということにも焦点を当てた。
①数学A
数学で自ら解決する力、論理的思考力、根気強さを身につけることを重視した。宿題で
は難易度の低い問題、授業では難易度の高い問題を扱った。授業では、先生が各生徒の予習での進捗を確認し、どこまでわかっていたのか、何が足りなかったのかを確認した。また総括として、経験に基づく直感力、既知の情報を活かそうとする問題処理能力、さらにそれをどう活かすかを見出す応用力が必要であったということに加えて、数学で身につく力を日常生活で活かすことの重要性について生徒に説明した。
②国語総合
昨今企業ではAIの導入を通して社会人の高度なコミュニケーション能力が求められて
ること、高校生は初等・中等教育を受ける中で社会人に近い立ち位置であること、その一
方でSNSの利用により口頭でのコミュニケーションの機会が減少していることから、高校におけるコミュニケーション能力の向上が重要であるといえる。そこで、今回は高校での最初の国語の授業という設定で、要約力を養成する授業を行った。授業では2人1組のペアワークで1人が用意された単語について相手に簡潔に説明し、相手はその説明からお題を推測して当てるという言語説明ゲームを行った。ゲームを通して、物事を簡潔に伝えるためには大きなカテゴリーから小さなカテゴリーへと話の内容を狭めていくこと、さらにそのカテゴリーの中で対象が持つ特徴を挙げることが効果的であると説明した。さらに、ネットニュースを読みながら要約することを意識するなど、日常生活においても活用できるような要約力の鍛え方を提案した。
③数学A
現在の数学の授業における問題点として、数学を学ぶ意義を生徒が認識していないこと、授業が一方的であること、授業についていける生徒とそうでない生徒で分離してしまうことの3点に焦点を当て、その解決策として授業の主眼をなぜ数学が必要なのかを説明すること、頭と体を使って楽しんで勉強してもらうこと、グループワークを通して生徒同士で高め合える環境を用意することにおいた。授業では確率を扱い、まずは日常生活における確率の実用性について考えて例を挙げた。さらに数学における⑴問題文を読む⑵解法を考える⑶答案を作成するという3ステップが問題解決における⑴現状を把握する⑵解決策を考える⑶解決策を提示するということに対応するということから数学の意義を説明した。グループワークで問題を解いた後には、数学が苦手な生徒に向けて、友達にわからないところを聞くという形も方法の一つとして提示した。
実演形式のリフレクション自体、今までにない新しい形だったため新鮮でした。各班の発表内容は、現状から見出される問題点を改善することを重視したものと社会の変化に合わせて必要になると考えられるものという大きく2つに分けられますが、どちらも共通して教育を受ける主体である生徒にとってより良い教育について提示していたと思います。教育は誰もが社会に出るに当たって受けるものであり、理想の教育の在り方を考えることは私たち自身が社会でどう生きていくべきなのか、何が必要であるのかを考えることにも繋がるのではないかと思いました。
文責:飯野 千香子