5月12日、日吉キャンパスにて、事前学習や高橋暁子様の講義を通し深めてきたテーマである「SNSと情報モラル~情報社会のあるべき姿~」について、ディベートを実施しました。
Twitterを含むSNSの使用により、デマの拡散・炎上・いじめなど多くの社会問題が引き起こされている現状において、学校はTwitterの使用自体を禁止するべきか。それとも、Twitterを積極的に用いて、実践的な情報モラル教育を行うべきかが争点になりました。以下、肯定派・否定派において挙げられた論点を紹介します。また、否定派が挙げた代替案も掲載します。
・東北大学が実施したアンケートによると、Twitterを始めとするスマートフォンの利用時間と学力の低下には正の相関関係がある。このことから、Twitterを禁止することで学力の低下を阻止できると考えられる。
・TwitterなどのSNSに割く時間が増加することで、睡眠や勉強、運動に割く時間は減少する。また、過度のスマートフォン使用には、スマホ依存症を引き起こすなどの健康被害が予想される。
・警察庁の調査によると、交流サイトを通じて起こる18歳未満の犯罪被害数は、2016年度に過去最高数を記録している。その犯罪被害数の約25%は、Twitterの使用を通じたものである。従って、Twitterを禁止することで犯罪に巻き込まれる事態を減らすことができると考えられる。
・Twitterを使用する時間が長くなれば、家族とコミュニケーションを取る時間が短くなる。それにより、家族との関わりが希薄になり、精神的な安らぎが損なわれたり、知的好奇心が低下したりする恐れがある。
・プリキャンティーンズラボの2016年7月の調査によると、SNSに関連したいじめを受けたことのある人は25%、見たことのある人は30%に上り、実際にSNSの使用によるいじめが起きている現状がある。従って、Twitterを禁止することで、いじめの減少に一定の効果が見込まれる。
・Twitterを使用する上で、気づかぬ内に中学生が加害者になるという事例が増加している。例えば、ある中学生が目立ちたいという理由で爆破予告をしたところ、自治体が注意喚起や警戒を行う事態となり、その生徒は威力業務妨害の疑いで書類送検された。実際にこのような事例があることを考慮すると、中学生は自身のSNS投稿に対する責任意識が低いと考えられる。
・東日本大震災の時に、数々の通信手段が停止する中、Twitterだけは正常に稼働した。このことから、Twitterは緊急時の有効な通信手段であると考えられる。
・ベネッセ教育総合研究所による「中高生のICT利用実態調査2014」によれば、趣味の繋がりのある中学生は、そうでない中学生に比べてTwitterを「ほぼ毎日」使っている割合が3倍以上高い。Twitterを禁止すれば、彼らの趣味を介する繋がりを断つことになる。
・中学生が実際にTwitterを使用することで、社会で求められるSNS活用能力や人との繋がり、様々な情報を得る機会が増加する。
・中学生のTwitter使用を禁止することで、彼らが中学生である間に限り、ネット上の生徒の安全を確保することができる。しかし、そのことは中学校卒業後の彼らの安全とは全く関係ない。また、それは単に問題が中学校在学中に起こることを防いでいるに過ぎず、将来彼らが情報リテラシーを身に付けた人間になるということは保証されない。
・Twitterのプライベート使用は条件を付した許可制とし、教育現場で情報モラルを培う機会を与える。具体的には、情報モラルに関する知識を講義形式で教え、その実践として、課題提出用アカウント内での自己紹介等の動画提出を課題とする。また、この課題をプライベート使用の許可条件とする。課題は先生や保護者、友人から〝いいね″(ツイートをお気に入りする機能)で評価してもらうため、競争意識を養いつつ、自己発信の楽しさを味わうことができる。また、ツイートを発信する中でいいねをした人と新しい交友関係を持つことにより、価値観が広がり、情報の正しさを判断する力が身に付く。このように、先生や保護者、友人に見守られながらTwitterを使用することで、安全に情報モラルを身に付けることができ、ポジティブなSNS利用の効果を期待することができる。
・中学校でTwitterを使用した情報モラルの教育を行うことで、生徒はTwitter使用における情報モラルを身に付けることができると考える。近年、スマートフォンの利用率が増加し、総務省が2014年に行った「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、10代の若者の約半数がコミュニケーション手段としてSNSを使用している。そして、10代がソーシャルメディアを利用する割合は年々増加し続けている。しかし、東京教育工学研究会の行った「情報教育及び情報モラル教育に関するアンケート」によると、教員の半数以上が情報モラル教育の指導をしていないという現状がある。その理由として、「情報モラルを指導する時間を取ることができない」という理由が61.3%を占めているため、政府が指導要領を変え、学校が情報モラルを指導する時間を設けることで、この問題を改善できると考えられる。
今回のディベートの準備をした際、私は「学校が危険性を考慮し、生徒の行動を制限した」という似たような事例を見つけました。その事例とは、日本各地の高校で1970年代後半から1990年代に掛けて盛んに行われた、「高校生に対するオートバイと自動車の三ない運動」です。この運動は、高校生の生命を尊重し、「オートバイの免許を取らない」「オートバイに乗らない」「オートバイを買わない」という3つの事項を、高校生に対して徹底させようというものでした。現在ではこの運動は下火になっているものの、依然としてこの運動を継続している高校もあります。このことから、私は学校が生徒にとって危険性を有するものを禁止することは、これまでも広く行われて来たことを知りました。 生徒にとって危険性を有するもの禁止することで、学校が生徒の安全を守る役割を果たそうとすることは決して間違いであるとは言えません。しかし、学校は教育機関であるため、生徒の安全を守ることだけに夢中になり、生徒の成長を支えるという役割を疎かにすることはあってはならないと思います。
文責 福田貴大