2016年度 第4回リフレクション

医師不足と医療崩壊~これからの日本医療~


 10月14日、日吉キャンパスにて、「医師不足と医療崩壊 ~これからの日本医療~」というテーマのもと、ディベートを行いました。

論題「医学部新設は国民にとってプラスである」


 2016年4月に、東北医科薬科大に医学部が新設されたことを受け、さらなる医学部新設が医師や患者だけではなく、国民にとってプラスであるのかについて考えました。以下、肯定側・否定側において挙げられた論点です。

肯定側


・労働環境の改善医師の絶対数を増やすことは、医師1人あたりの負担を軽減することにつながるため、医師の週80時間という過労死認定基準を大きく超える過剰労働による体調悪化、過労死、自殺、うつ病等の問題の解決につながる。

 

・地域偏在の改善地域枠入試制度を利用して、医師が不足している地域で、将来働くであろう医学生を確保することで、医師の地域間の偏在という問題を解決することができる。

 

・医療ニーズに合わせた医学部の新設既存の医学部の定員を拡充するよりも医学部を新設する方が、医療ニーズに合わせた教育方針を掲げ、学生を教育しやすいという柔軟性を持つ。

 

・手術支援ロボット、人工知能AIの導入機械にできることは機械に任せ、出来ないことは医師がやるなど、人間と機械で役割を分担することによって、医師の負担を減らすことができる。

否定側


・財政確保の難しさ医学部を新設するには医療設備を整えるため、約400億円という莫大な費用がかかるため、既存の医学部の定員を増やした方が良い。

 

・指導員の確保の難しさ指導員を確保するためには、実際の医療現場から約300名の医師を引き抜かなければならないため、医療現場での医師不足がますます深刻化し、地域医療が崩壊する可能性がある。

 

・医学部生の絶対数増加では医師不足を解決できない医師の絶対数が増えても、医師不足の地域で医師が増えなければ、医師の偏在問題を解決することはできない。

 

・医師の過剰供給医師数は年々増加しており、人口減少を考慮すると、遅くとも2033年には需給が均衡し、それ以降は供給過多になると言われている。医学部新設による医学部生の増加は、長期的な視点に立つと、供給過多による質の低下を招きかねない。

所感


 今回のディベートでは、いずれの班においても「医学部を新設するか、既存の医学部の定員を増やすか」が争点となりました。私は、否定の立場、すなわち、「医学部新設は、国民にとってプラスではない」という立場でディベートを行いました。ディベート終了後に先輩方から、「事前学習で扱った「予防医療」や「コンビニ受診の抑制」に焦点を当てても良かったのではないか」とのご指摘を受け、コンビニ受診の抑制に成功したある限界集落の話を思い出しました。 

 

 その集落では、村でたった一人しかいない小児科医の負担を軽減するために、医療関係者監修のもと、地元の方々が病気の対応マニュアルを作成しました。その対応マニュアルには、病院に行くべきか、行かなくても良いのかが分かりやすく書かれていたため、症状が軽い子供は病院に来なくなりました。現在では、病院の利用者がピーク時の3割にまで減少し、本当に治療が必要な子供の治療に専念できる上、病院内での2次感染のリスクが減少したそうです。 

 

 この話を思い出し、ディベートテーマばかりにとらわれて、医師数に焦点を当てていたことに気が付きました。改めて、事前学習や勉強会で学んだことを、ディベートに生かす重要性を実感しました。

 

文責 氏江 優希子