【池田班】
国内観光の発達
外国人観光客を増加させるためには、日本における国内観光を活性化させることが効果的であるといえます。なぜなら、国内観光が活性化されることにより、観光地の供給能力向上や観光交通網の発達が見込まれ、日本の地方観光が確立されるといえるからです。そこで、国内の観光を活性化させるために、以下の2つの政策を提案します。
①有給休暇取得の義務化 日本人の有給休暇取得率は世界で2番目に低く、これを改善して休暇を増やすことができれば、余暇の時間が発生します。また、日本人の有給休暇の使い道として最も多い回答が「複数回に分けて短い旅行をする」であることから、潜在的な国内旅行への需要を窺うことができます。そこで、有給休暇の取得を法律で義務化することを提案します。これにより国内へ旅行する機会が増加し、国内観光を活性化することができると考えます。
②大型休暇の分散
有給休暇の取得率が低迷している原因として、自分が休暇を取ることで周囲に迷惑をかけてしまうという抵抗感があります。この抵抗感が生じる理由は、土日祝日のような従来からの休暇制度が全員一斉に休暇を取るものであるために、個別で異なる時期に休暇を取る有給休暇の制度へ慣れていないからであると考えます。そこで、大型休暇の時期を個別にずらす休暇の分散を法律で定めることを提案します。これは有給休暇取得の促進ばかりでなく、これまで大型休暇の時期に集中していた観光需要を平準化させることにつながり、観光地にとって大きな利益となりえます。
【南部班】
東南アジアからの観光客増加
現在の訪日外国人消費額の約7割は、中国・台湾・韓国等の5カ国によって占められています。これら東アジア諸国への依存から脱却することが急務であるといえます。そこで、経済成長の著しい東南アジア諸国を中心とした、ムスリムの観光客を増加させることで、前述の課題が達成できると考えます。そのために、以下の2つの政策を提案します。
①環境整備
ムスリムを受け入れるためには、イスラム教の教義によって認められたハラールと呼ばれる食事の提供が必要です。そこで、国内のハラール提供店を確保し、それをイスラム教諸国へと広報していくことを提案します。これによってムスリムの受け入れる環境が整備され、日本を訪れるムスリムが増加するといえます。
②イスラム教への理解
日本人のイスラム教に対する理解は進んでいるとはいえません。その原因として、イスラム教について「知らないから怖い」という意識があると考えられます。この現状を打破しないことには、ムスリムが日本への旅行を敬遠する、国内の環境整備が進まないといった弊害が生じます。そこで、イスラム教への正しい理解を図り、小中高校の教育において宗教の内容を取り扱うことを提案します。現在の教育課程では、宗教分野は社会化に含まれ、政治と関連する部分のみを教えられるため、授業で宗教の具体的内容を扱うことはありません。そこで、イスラム教だけでなく、幅広い宗教の内容について扱うことで、諸宗教について知り、正しく理解することが可能になります。
○南部班尋問
1、日本における国内旅行者数と訪日外国人数は増加していますか?減少していますか? 2、どのような人の、どのような休暇を分散させようと考えていますか?
○池田班回答
1、国内旅行者数は横ばいで、訪日外国人数は増加の傾向にあります。 2、企業に勤める社会人の、GWやSW(シルバーウィーク)を分散させようと考えています。お盆のような日本の文化に根ざした休暇については、分散させず従来通りとします。
○池田班尋問
1、ハラールを提供する機関や店舗は新設しますか? 2、宗教への理解を図るのに、なぜ学校教育でなければならないのですか?
○南部班回答 1、ハラール提供のための機関については新設しますが、店舗は既存のものを利用します。 2、ムスリムと交流することにつなげるためです。従来の歴史・政治の一部に組み込んだ教育では不十分であり、宗教の教義や慣習に関する知識を得て、幼少期から正しい理解を図ることで、異教徒との正しい交流が生まれます。
○池田班反駁
・ハラールについてハラールフードには認証制度がありますが、公式なハラール認証を受けるには多額の費用がかかります。一方でムスリム観光客が確実に来店するとは限らないため、リスクに対するリターンが小さいといえます。また既存の店舗でハラールを提供することに関しても、現状の日本人のイスラム教に対するイメージを考慮すると、日本人客からの売上への影響が懸念されます。・教育についてムスリムの観光客増加を目標とするのに、学校で諸宗教一般について教育しても十分な効果は得られません。一方でイスラム教について集中的に教育してしまえば、政教分離の原則にもとります。
○南部班反駁
・有給取得義務化について 有給休暇取得義務によって、単純に休暇を増やしても、国内旅行の需要が高まるとは限りません。特に海外旅行の人気が高まってしまえば、国内観光の活性化は達成できなくなります。・休暇分散について休暇分散については、その効果に疑問があります。GWやSWのような大型休暇を分散させることは、これまで観光客の集中する時期を予測して対応してきた観光地側にとって、来客数が予想しにくくなり、対応が難しくなることにつながります。また、休暇時期の分散は有名観光地の混雑緩和にはある程度つながりますが、その結果、有名観光地へ足を運ぶ観光客がさらに増え、それ以外の観光地にとって不利益となることが考えられます。
○池田班
・宗教教育に対する反論イスラム教に対する偏見を生じさせるのはメディアの影響が大きく、学校教育で基礎的な宗教知識を身に付けたとしても、それだけでメディアの影響を排除できるかどうかには疑問があります。またムスリム誘致のためには、学生だけでなく大人が持つ偏見を解消しなければならないのであって、教育単独でその役割を担うことには無理があるといえます。
・観光地強化についての主張日本の観光地の強化を図る政策は、訪日外国人を包括的に増加させるものであり、ムスリムに限定する政策とは一線を画しています。地方の観光資源を強化することで、インフラの整備も可能となり、長期的な観光客増加を見込むことができます。
○南部班
・宗教教育についての主張
諸外国の高校との交換留学制度を強化することで、身近でない宗教への理解はさらに深まります。また留学生が帰国し、母国で日本の良さを周囲へと広めてくれることも考えられ、結果的に日本の観光産業にとって一石二鳥の政策となります。
・ハラールについての主張
和食とハラールは食材の点などで相性が良く、ムスリムにとってハラールの和食は魅力的なものであると考えられます。そのため需要は十分にあり、既存の店舗にとってのリスクは小さいといえます。また、ハラール認証する店舗には補助金を支給し、普及の促進を図ります。
2020年の東京オリンピックを控え、訪日外国人を対象とした観光事業は大きく発展しようとしています。オリンピックへ向けて観光客の受け入れ体制を整備することはもちろん、観光客のリピーター化のために観光地の魅力を高めていくことも必要となるでしょう。今回の課題はオリンピックとの直接の関係はありませんが、観光政策の確立が急務とされる今、非常に意味のある論題であるといえます。 観光事業に関わる新たな取り組みや議論は現在も進んでいます。成長が確実な重要分野として、その行く末を注視していきたいと思います。
文責 釋悟史