岸本班は現在の東京一極集中状態・中央集権体制を維持すべきだと主張し、その根拠に以下の三点を挙げた。
1 インフラ投資の費用対効果の高さ
2 情報・物流が迅速化
3 就業者密度の高さとオフィス間の近接性から生産性が向上
肯定側立論を受けて内田班から以下のような質問がなされた。
① 中心部のインフラ整備はもう十分ではないのか。
② オフィスの近接性が生産性につながるとはいえないのではないか。
③ 情報は地方でも迅速に手に入れることができるのではないか。
これらに対して岸本班はこのように回答した。
① より発達させるわけではない。
② 情報社会でも人と人が直接会うことは必要。
③ 情報とは数値化できるものだけではない。人の集団も一種のデータ。
内田班は以下のように、中央集権にともなうデメリット二点と地方分権のメリット二点を挙げた。
1 地方衰退の加速
2 天災やテロのリスクの肥大化
3 財源と権限の移譲、多重行政の解消により効率的・効果的な行政と責任ある財政運営の実現
この立論を受けて岸本班から以下のような質問がなされた。
① 多重債務とはどのようなものをさしているのか。
② 道州制にするのか。
③ 地方の裁量権・財源は現状では不十分なのか。
これらに対して内田班はこのように回答した。
① 国・県・市が同様な課題に取り組んでしまうこと。
② 地方に権限を多少引き渡す程度である。
③ さらなる地方分権が必要。
岸本班に対して内田班から以下のような反駁がなされた。
① インフラ投資の費用対効果が高いとはいえない。
② 地方のインフラ整備をないがしろにしている。
③ 地方の生産性が下がるので国全体では生産性が下がる。
④ 情報の迅速化はIT技術の発達で十分達成されるので集権はいらない。
⑤ 数値化されない情報の件も通信の発達で解決される。(例スカイプ)
⑥ 天災・テロでのリスクを考えていない。情報が錯綜しうる。
これに対して岸本班はこのように返答した。
③ 国内で争うのでなくひとつの都市に限るとしても強化し海外と競争することが重要。東京のGDPは世界 トップであり、また人が集まっていることが東京のプレゼンスだ。現在のグローバル化社会の機運は一 極集中だ。
⑤ 人の紹介での偶然の出会いなどが失われてしまう。
⑥ 日本は全国どこでもその危険はある。また中央のほうが免震などの対策を進めている。
内田班に対して岸本班から以下のような反駁がなされた。
① 『無駄が多い』や『多重』はいいすぎ。
② 経験の少ない地域の行政機関はむしろ無駄なことをしかねないので権限を委譲すべきではない。
③ 財政難なので地方に財源を移譲することは難しい。
これに対して内田班は以下のように答えた。
① 過言ではない。
② そのような場合裁量権を制限しつつ財源を与えればよく、自主的に活動できる自治体により自由に使用 できる財源を与える。
③ 財政難であるからこそ我々のやり方で無駄をなくすべきである。
これまでに出た論点をふまえ、両者間でさらに議論を深めた。
(1)リスクの肥大化について
岸:行政機関が安全かどうか審査・点検するので大丈夫だ。
内:安全だという保障はない。日本はどこでも危険だとそちらが主張したのに反する。
リスクについてはもっと慎重に考えるべきだ。
岸:中央部で免震などが進んでいるのでこちらのほうがリスクを考えている。
(2)日本全体の損得について
内:現状のままでは人口が減少して日本全体の力は下がる。
岸:各地方をばらばらに強化しても効果は薄く人口は減る。東京を集中的に強化した方が相乗効果を生み有利である。
内:中央集権の現状で日本が弱体化しているが?
岸:地方に任せて日本が勝てるのだろうか?
(3)効率について
岸:地方は優良企業がなく資金を浪費しやすいのでは?
内:地方同士で競争するので洗練される。
岸:海外と争わねばならないのに国内で張り合ってどうするのだ。
岸田班:インフラ投資の費用対効果・情報と物流の迅速化・人の密集による生産性の向上の三点より東京一極集中状態は維持すべきである。人が集まることでリスクは高まるが、中心部のプレゼンスと強さが高まるのである。
内田班:地方衰退の加速を抑え、天災とテロのリスクを分散するには地方分権を進めるべきである。このまま日本が高いリスクを抱える国になってしまうと海外からの信用を失うことになる。
他のディベートにも勝って白熱した議論が繰り広げられ、審判員だけでなく周囲の聴衆もひきこまれていた。ディベートというものが、いかに審判員に対して自身の主張を訴えかけるかに重きが置かれることをふまえ、審判員に対して視線を向けるなどの効果的なアピールをしていた点に好感を持ったという審判員もいた。表現豊かに聴衆に訴えかける弁舌に長けた話者が多い組み合わせであったが、ディベートにおいては一度結論を先に提示することがさらに良いというアドバイスを審査員からいただいた。
文責 杉本佳穂