2月9日、Front Runner春合宿の最終日に、移民、そして原発という2つのテーマのもと、AチームBチームに分かれそれぞれディベートを行いました。
第一試合として移民班、第二試合として原発班のディベートを実施、AチームBチームそれぞれにジャッジを2名配置の上、最終的には事前配布された判定シートを使い聴衆が得点を出し、その合計得点で勝敗を決定しました。 以下、ジャッジを務めた2名のうち代表者1名によるディベートの講評です。
論題
「今後50年で人口の一割、1000万人程度の移民受け入れを目指す「日本型移民政策」に是か非か」
<A班講評>
●肯定側立論
1, 人材、労働力の国内における減少
偏った人材バランスをなくす
特定産業にあてる
2,日本経済の活性化
(瀬戸さんの講演より)
3, 在日外国人が抱える問題
従来の法改正
不法滞在者を国で認めることで解決
4, 日本の国際的役割の向上
ODA,PKOの例、金銭と派遣の差がおおきいと批判されている
●質疑より
・ODA, PKOと日本型移民政策の受け入れは関係あるのか?
→直接は関係無し
・不法入国者は認められるのか?
→不法滞在者は、ポイント制で振り分けてから認める
・経済停滞と人口の関連性
→人口が少なくなったことがすべての原因ではない
○否定側立論
1, 高齢者・女性の再雇用で人材不足解消
定年の引き下げ、女性の就労で700万人確保のデータあり。
移民すべては労働にうつせない
2, モラル低下、治安悪化などの弊害
カナダ、中国の治安悪化、住民との摩擦の例。
差別によって能力を活かした職に就けない
日本型移民政策は幅広く採る
→犯罪の増加
3段階的な受け入れという提案
50年は急。段階的に
日本人雇用のほうが全体的なコストが安い。法、環境整備を整えるのは大変。
○質疑より
・なぜ50年では急か?
→50年後、労働人口が45%というデータあり。
・700万人で雇用は足りるのか?
→足りる。
・女性、高齢者には教育が不要か?
→不要という前提・法整備費用はどれくらいか?
→具体的試算はないが、予想。ただ、国民なら税でかえってくるが、移民はかえってこない。
○否定側第一反駁
・女性や高齢者ができない職は、単純労働。日本型移民政策では、移民は単純労働以外につけるものなので、あわない
・バランス良く、職をふりわけたとしても、移民の2世や3世の職はコントロールできない。むしろ、第三次産業を日本人から奪い、デメリットになりうる。
・消費の増加による効果はたった1割。よって経済停滞は消費がすべての理由ではない。
・フランスは、急激な移民受け入れが原因。よって、50年は急すぎる。
・日本人の労働人口を増やした方が、コストが安い。・ODAやPKOと移民政策は直接関係がない。国際的な地位向上を目指すならば、移民ではなく「難民」を受け入れるべき
●肯定側第一反駁
・女性、高齢者だけでは、労働人口は39%しかいない。(データあり)よって、女性
・高齢者だけでなく移民の取り入れも必要
・50年という期間で700万人では足りない。1000万人必要。
・2~3世の問題について。第一次産業すでに足りていない。また、看護師など特別な資格が必要な職も足りないのでそちらにまわす。
・女性、高齢者を就労させるだけでは消費はかわらない。移民は10%伸びる可能性がある。
・法整備の甘さがフランスの混乱を招いた。日本型移民政策は大丈夫。
○否定側第二反駁
・看護師にはスキルが必要…スキルを学んでもらう。まず技術を段階的に学ばさせるため、まず単純労働者として受け入れるので意味はない
・高齢者の定年を75まで引き上げる・今までの確認
●肯定側第二反駁
・女性、高齢者だけで足りない
→移民必要・GDP活性化・移民に教育するのも、女性や高齢者に教育するのと変わらない
・自民党は、移民を「職人」として仮定
・消費増加
・G8は、難民を中心として移民をうけいれる
結果として、否定側勝利
<B班講評>
肯定側立論(プラン)
・「育成型」移民政策を推進する
・日本型移民政策の基盤整備
・人道的配慮を要する移民の受け家れ否定側立論(プラン)
・現状維持
であった。
・ディベートは相手を論破するのではなく、聴衆に議論を理解してもらう場
→立論や反駁が、予備知識の無い者からすると、難しい(速い)
・プラン導入の際のメリットデメリットの議論方法としてすでにそのプランを導入している他の地域の現状と比較する、というのはよく使う方法。しかし、「その地域は議論の対象となっている地域とは異なる状況にある」で一蹴されることもおおい
→岡田が、「なぜ、この地域の具体例が根拠になるか」を詳細に発表しているのがよかった
・立論根拠のデータを見やすくグラフ化して、聴衆にアピールしていたのがよかった
・肯定側に資料、参考文献の引用が少なかったので信憑性が低かった
・聞き逃しただけかも知れないが、否定側は一度肯定側が明示されていた資料をないものとして話を進めていた
・否定側は否定はしていたが具体的なプランはなく、現状維持のみだった
・肯定側の第二反ばくで時間があまってしまったのに、まとめに入らないで時間を殺してしまった
論題
「現在運転中の原子力発電所すべてを停止し、2030年までに国内原子力発電所を全面的に廃止することに是か非か」
<A班講評>
肯定側立論
・自然エネルギー比率を2020年までに30%に、2030年までに35-40%に拡大・電力需要を20%削減
・段階的なエネルギーの移行否定側立論
・現時点における原子力発電比率は3・11震災前の水準を保ち、2050年を目途にトリウム原発の導入を議論する。
という内容でした。
全体として立論に対する第一反駁、それに対する第二反駁と論理的に説明されており、議論が進んでいたのでよかったと思います。さらに、相手が立論で提示してきた資料についてもきちんと根拠の信憑性を求める視点が盛り込まれていた部分も良かったです。勝敗を分けたポイントは、限られた時間の中で、いかに自分たちの立論におけるメリットがたくさんあり、それが重要であるかを聴いている人にアピールできたか、でした。特にこの原子力発電所というテーマは、どうしても議論をする際に理科系の説明をする場面が多くなってきます。その事象を、あまり事前知識を持ち合わせていないオーディエンスに対してどのようにわかりやすく説明し評価してもらうかが重要となりました。結果として、否定側が勝利しました。
肯定側、否定側共に1年生2年生がうまく連携し準備をしていた様子が伺えました。話す内容だけではなく、伝え方が大切であることを踏まえてこれからのディベートに活かしていければと思います。おつかれさまでした。
<B班講評>
全体を通して、お互い自分たちの立場をきちんと理解して、立論反駁ともに良いディベートになっていたと思います。どちらも立論はきちんと練ってあり、良かったと思います。根拠もきちんとしており、データなどにも信憑性があってとても良かったと思います。ただ、肯定側の根拠が各メリットに対し、3点ずつくらいあり、どこに重点を置いて反駁すれば良いか分かりにくかったので、特に重要な根拠を強調したり、根拠を絞るなりした方が有効なディベートになったのではないかと思います。
質疑もどちらも弱いところを突いていて良かったと思います。ただ、否定側に対する肯定側の質疑が第1反駁につながっていなかったのが少し残念でした。もう少し自分たちの反駁につなげるような質疑ができれば良かったと思います。肯定側に対する否定側の質疑は自分たちの反駁につなげた良い質問もあり、良かったと思います。言葉の定義などを質疑で聞いていたのに反駁で定義が噛み合わないところもあったので、そこは事前にすり合わせを行うなどしてお互いがしっかりと分かっているようにした方が良いかと思いました。
続いて、第1反駁に関しては、どのメリットにも全てきちんと反駁を行っており、データも出されていて良かったと思います。ただ、肯定側の反駁が1つひとつの反駁が長く、全部の反駁を行えていなかったところが残念でした。立論に対してはきちんと反駁できていましたが、否定側第1反駁に対しても反駁しなければならないのにほとんど触れられていなかったので時間配分をきちんと行うとより良かったと思います。第1反駁で触れなかったものはレイトレスポンス扱いになってしまうので第2反駁で触れられないのでそこに注意して行うと良かったと思います。しかし、立論に対する反駁は完璧だったのでとてもよかったと思います。第2反駁もどちらも良くできていたと思います。ただ、否定側の第2反駁で反駁がそれぞれ一言ずつくらいの反駁で時間が余ってしまっていたので、もっと詳しく反駁するなどできたらより良かったと思います。第2反駁は自分たちの主張を相手や観客、ジャッジに伝える最後の機会なので時間オーバーも良くないと思いますが、時間があるならばもう少し主張をアピールしても良かったと思います。
全体的に気になったのは、ディベートは客観的な証拠で勝負するものであると思うので、出来る限り主観的な言葉は避けた方がより説得力が増すと感じました。 全体的に見て立論もしっかりしており、質疑や反駁もきちんと行えていてとても良いディベートでした。1年生も2年生もコミットしており、みなが自分の役割を適切に果たしていてよかったと思います。最後にオーディエンスの投票の結果、肯定側が勝利となりました。
ディベートも回数を重ねていくに従いメンバーも慣れてきており、全体として質の高いものとなってきました。そんな中で今回重要となったのが、「聴いている人への伝え方」でした。これからもきちんとした準備のもとに質の良い議論の展開をしつつ、今回の反省点を踏まえよりよいディベートにしていきます。