6月1日、日本銀行金融研究所貨幣博物館と日本銀行本店を訪れました。今回は、第1回定例会テーマである「オカネのカタチ 〜仮想通貨のこれまでとこれから〜」を踏まえ、お金の歴史を知り、お金を流通させる銀行の役割について理解することを目的として開催しました。また、お金とそれを取り巻く文化・社会・制度がこれまでどのような変遷を遂げてきたか学び、その延長として仮想通貨がどのように位置づけられるのかを考えました。
貨幣博物館は、日本銀行創立100周年を記念してつくられた施設であり、日本銀行が収集してきた様々なお金や、お金に関する絵画、道具などのコレクションとその研究成果が展示されています。古代から現代までのお金の変遷が豊富な展示物とともに紹介されており、当時の社会情勢やものの値段を通して、お金がどのように使われていたのかを知ることができました。銭貨の束を実際に手に持ってみたり、自分でスタンプを押して藩札を作ったりと、体感型の展示コーナーもありました。また、展示されている貨幣・紙幣は日本だけでなく世界各国から集められており、年代やデザインによる違いを実際に見て楽しむことができました。ハイパーインフレ期のジンバブエ・ドルやドイツ紙幣など、有名な紙幣の実物も展示されており、管理通貨制度の皮肉を味わうとともに、価値と信用を保持するというお金の本質について考えさせられました。
日本銀行では、日本銀行の機能と組織についてのビデオレクチャーを受けたのち、職員からの説明を聞きながら新館と本館の一部を見学しました。明治期に竣工した本館は、当時の建築学界の第一人者であった辰野金吾によって設計された建物で、国の重要文化財に指定されています。本館は現在免震化工事中で中に入ることはできませんでした。しかし、数々の災害を免れてきた本館の歴史と現在行われている免震化工事に関して非常に興味深いお話を聞くことができました。
1億円の札束の重さを体験したり、金塊のレプリカを持って記念撮影をしたりと、他ではできない貴重な経験も多く、充実した時間となりました。個人が日本銀行の窓口を利用する機会は基本的にはありませんが、損傷したお金の引換や交通違反の反則金の納付の際には利用できるそうです。今後もし誤ってお札を燃やしてしまった場合は、日本銀行にその灰を持っていこうと思います。
私たちは、普段当然のようににお金を使っていますが、歴史的に見ればそのことは決して当たり前だったわけではありません。今回のフィールドワークは、お金の歴史や本質、流通のための制度に迫り、なぜ私たちがお金を信用して使うことができているのか考える機会となりました。新しいお金の形として現れた仮想通貨も、今後の健全な発展のためには、その本質的な性格の理解と制度的な支柱の拡充が不可欠なのではないでしょうか。
文責:落合倫之介