2014年度 春合宿

地方創生 東京一極集中が招く人口減少と極点社会


 2月5日から7日までの3日間、国立オリンピック記念青少年総合センターにて2014年度春合宿を行いました。普段の定例会の集大成として位置づけられる春合宿では、今年度はテーマを「地方創生」と設定し、講師の方をお呼びしての勉強会やディベートを通して、東京一極集中が招く人口減少と極点社会について考えました。

1日目


 2015年2月5日、春合宿が幕を開けました。午前10時からは、地域再生プランナーの久繁哲之介様を講師にお招きし、勉強会を行いました。勉強会についての詳しい内容はこちらをご覧ください。

 

 その後、昼食を済ませ、学習企画を2つ行いました。一つ目の学習企画では、8班に分かれ「マシュマロチャレンジ」を行い、グループワークで必要なことについて学びました。詳細を以下に掲載します。

 

 2月5日、オリンピックセンターでの春合宿の一環としてマシュマロチャレンジを行いました。

  マシュマロチャレンジとは、パスタ(乾麺)、糸、ガムテープという限られた材料を用い、制限時間内にマシュマロをより高い位置に置いたグループが勝ちというワークショップで、企業や大学などでチームビルディングの一環として行われています。

 このマシュマロチャレンジには興味深いデータが存在します。それは、幼稚園児のグループとMBA取得者のグループがそれぞれマシュマロチャレンジを行ったとき、幼稚園児グループの方がより高い位置にマシュマロを置くことができたというものです。そして、この理由は極めて重要なものであり、一つの理由としては、MBA取得者は制限時間の最後のほうでマシュマロを載せたのに対し、幼稚園児は制限時間の前半にマシュマロを載せ、マシュマロの重さを早い段階で認識したことが挙げられます。つまり、早い段階に失敗をし、失敗から学び、再度作り直したのです。

 そして、マシュマロチャレンジにおいてはチームワークがかなり重要なものになります。チームワークを高めるには、チームの中での役割分担を明確にすることが必要です。それによって、チームでの問題解決が容易になるのです。また、チームワーク向上にはファシリテーションの能力も欠かせません。ファシリテーションとはグループの人の力を最大限にして、グループ員の理解を得ることを意味します。そして、その役割を担う人のことをファシリテーターと呼び、グループ員の発言を促し、それらの意見を収束するという仕事を行います。

 限られた資源、時間の中で成果を出すためには、グループ員がグループのためにある特定の役割を担っているという意識を持って、取り組むことが重要になります。今回の企画では、そのことを体験を通して実感することができました。

 

文責 南部久翔

 

 二つ目の学習企画では「Case study」を行い、物事についての分析の方法を体験しました。詳細を以下に掲載します。

 

 2月5日、オリンピックセンターでの春合宿の一環としてCase Studyを行いました。

 今回の学習企画はCase Studyを使って様々な問題を考え、抽象的な問題を具体的、論理的に考える能力を身につけるという目的で行われました。Case Studyとは与えられた状況に対し、前提を設定し、知っている知識だけをもとに合理的な過程とロジックを駆使して分析し、打ち手を提案するシミュレーションを指します。具体的には、「現状分析」「課題特定」「解決策定」の3ステップを踏んで問題を考えていきました。現状分析では、問題となっている現状を詳しく把握します。現状分析のツールには様々なものが存在しますが、今回の学習企画ではロジックツリーを使用して現状分析にあたりました。次に、課題特定です。問題の主要要因を考えますが、難しい場合には分解して考えます。現状分析、課題特定のステップを経て、最後に課題への対処方法について考えます。ありうる様々な対処方法について、有効性や実現可能性などを考慮して優先順位をつけた上で解決策の策定を行います。論理的なCase Studyを行うには、解決策のアイデアだけを出し合うようなアイデア大会をするのではなく、現状分析、課題特定、解決策定のステップをきちんと踏んで進めていくことが重要となります。

 今回は男子大学生A君がバレンタインデーにチョコを20個もらうには?という問題に対して取り組みました。どの班もどこに対していつから働きかけるなど、しっかりCaseStudyに適応できていました。お題もとても親しみやすい問題であり、皆が楽しんで学習企画に参加できていました。しかし、アイデア大会になってしまっている班もあり、もう少し具体的に条件を絞ってあった方がいいのではないかと思いました。

 

文責 石井玲一郎

 

 夕食を済ませ、NPO元気な日本をつくる会の組織運営本部長の須田憲和様を講師にお招きし、勉強会を行いました。日本社会の構造的課題の分析と地域活性化について講演していただきました。勉強会についての詳しい内容はこちらをご覧ください。

2日目


 2日目は約2ヶ月をかけて準備をしてきたディベートを行いました。

 

 今回はWhich論・How論という二つの形式でディベートを行いました。Which論では「東京一極集中状態は是か非か」という論題のもと、肯定派と否定派に分かれて、ディベートを行いました。今後、日本の数多くの地方自治体では、教育格差や雇用格差を原因に、人口が趨勢として本格的に減少し、少子高齢化やそれに伴う産業の衰退及び経済の縮小が一層進行することが見込まれています。これらの懸念材料を念頭に入れ、国は現在の東京一極集中状況並びに中央集権体制を維持するべきなのか。それとも、地方分権を推進し、地方経済の活性化をはかるべきなのか。今回のディベートを通して、その問題について深く考えました。詳しい内容はこちらをご覧ください。

 

 一方、HOW論では、地方創生の具体的な手段や地域間格差の是正方法について、各々の班が独自の提案を行い、ディベート行いました。地方における教育や雇用の相対的な格差を是正し、東京を中心とする都市部への人口流出に歯止めをかけ、地方経済を活性化させるために、国や地方自治体はどのような施策をとるべきなのかについて深く考えました。詳しい内容はこちらをご覧ください。

 

 夕食を済ませ、東京農業大学教授、農林水産省「食のモデル地域構築計画選定委員会副委員長の木村俊昭様を講師にお招きし、勉強会を行いました。活力のある地域とそうでない地域とでは何が違うのかについて、詳しく講演していただきました。勉強会についての詳しい内容はこちらをご覧ください。

3日目


 最終日となる3日目の朝には、2年生の追い出し企画が行われました。今回の春合宿を限りにサークルの主要な活動から引退する2年生に向けて、1年生からメッセージ動画と歌が贈られ、思わず涙ぐむ2年生の姿も見られました。

 

 その後にはリフレクションが行われました。春合宿で学んだことをふまえ、各チームが担当となった地域の活性化についてのアイデアを競うチーム対抗コンペティションを行いました。

 

 コンペティションのテーマは「地方の魅力を発信する方策」。それぞれのチームに徳島、岡山、那覇、名東区(名古屋)、青森、旭川、宮崎の担当地域が割り振られ、その地域の魅力のアピール方法、地域を活性化させる方法についてチームごとに考え、発表を行いました。インターネットや出身者の話を通じてその地域の魅力を発見し、特に強調したい地域の特色、キャッチコピー、そしてそれを誰に、どのようにアピールするかを考える作業を通して、地方創生についてより実践的な学習を行いました。以下、各チームの発表内容です。


徳島「あわよくば、阿波」

 99万ドルの夜景と呼ばれる眉山からの夜景や、眉山にある縁結びの神社をアピールポイントとして、カップル層を中心に観光客の拡大を狙う。


岡山「探しにいこう、桃太郎」

 岡山県は桃太郎伝説発祥の地と言われていることから、吉備津彦神社など桃太郎にまつわるスポット巡りや、美しい河川や気候の良さを活かしたイベント企画を通して、ファミリー層の呼び込みを行う。


那覇「和衷織り交ざる悠久の地」

 沖縄県は歴史的、地理的に日本と中国の文化が融合するユニークな土地。文化的特色をアピールすることで、新たな沖縄の魅力を全国に発信することを目指す。中城城跡、座喜味城跡、勝連城跡、今帰仁城跡などのグスクやその関連遺産である識名園など、首里城以外の世界遺産にも観光客の目を向けさせる。


名東「気楽、極楽、名東区」

 香流川沿いの緑を楽しめるサイクリングコース、牧野池周辺の自然を楽しむコース、名東区出身の武将である柴田勝家にまつわる歴史を学ぶことのできる見学コースなど、様々な観点から名東区をゆっくりと楽しむことのできる観光コースを作成し、名古屋県民に名東区の魅力を発信する。また、フィギュアスケート選手を多く輩出する県であることから、子どもから大人まで楽しむことのできるスポーツ施設の建設も行う。


青森「食べられるアイドルMKG48」

 青森のカップラーメン消費量が全国1位であることから、カップラーメンによる地域活性化を提案。青森の名物である味噌カレー牛乳ラーメンの魅力を、MKG48というアイドルグループによるプロモーション活動を通じて発信する。


旭川「ASK41 大雪ダイヤモンド」

 低温のおかげで、水分量の少ないサラサラの雪が降る旭川。ダイヤモンドダスト現象などの自然現象や大雪山の雄大な景色をアピールするとともに、雪合戦大会などの雪を使ったイベントを開催することで、自然を通して旭川の魅力を全国に発信する。


宮崎「つながる、むすぶ、あたたかく」

 本島と弥生橋でつながる青島、縁結びの神社として有名な青島神社、景色の美しさ、気候の温暖さをアピールポイントとして、宮崎を訪れることで夫婦やカップルの絆を「つなげる」「むすぶ」「あたたかく」するというコンセプトのもと、宮崎の魅力を再発見してもらう。


 コンペティション後は、合宿の締めくくりとして3つ目の学習企画「SHOW & TELL」を行いました。これは主に北米で行われる教育科目の一つで、身近なものやそれにまつわるエピソードについて聴衆に話す経験を通して、パブリック・スピーキングのスキルを教えるためのワークです。今回は「最近うれしかったこと」「自分の尊敬する人」「今年の目標」「10年後に何をしていたいか」などのテーマについて、所定の時間の中で伝える練習を行いました。時間を意識しながら話すこと、伝わる話し方、人の話の聞き方などを学ぶことができたとともに、自分の過去や現在、未来について考えるきっかけとなりました。わずか1時間弱の学習企画だったにもかかわらず、話すことへの苦手意識を少し払拭することができた、時間を意識した話し方ができるようになったという声も多くの参加者から聞かれました。


 今回の春合宿での一番の学びは、各々が自分の置かれた環境を離れ、日本の現状を客観的にとらえることができるようになったことだと思います。今まで都会で暮らしてきた人の中には地方の問題を身近に考えることが難しいと感じた人もいたようでしたが、春合宿の準備期間も合わせて2ヶ月間、地方について学んだ経験を通して、地方に興味を持ったり、自分にも何かできることはないかと考えることができた人も多かったのではないかと思います。また、地方で暮らしてきた人にとっても、自分の住んでいた地域を新しい観点からとらえ直すことのできる機会になったのではないでしょうか。今まで地方に関心を持っていなかった人も、地方の現状を実感として知っている人も、それぞれに新しい学びがあった3日間でした。


文責 南部久翔、石井玲一郎、矢部麻里菜