5 回リフレクション  ~ 食生活の変化 と 健康問題 ~

今回の定例会では、Case Studyや西居豊様の講義を通し深めてきたテーマである「食生活の変化と健康問題」について、ディベートを実施しました。

 

食品加工技術や運搬技術の進歩等により、我々の食生活はより多彩に、より便利になりました。しかしその一方で、現在生活習慣病が死因の6割、医療費の3割を占めるなど、食生活をはじめとする生活習慣の変化が我々の健康にも影響を与えています。ここで今一度我々の「食」について再考するため、今回は生活習慣病と食に焦点を当てディベートを行いました。



課題「2050年までに生活習慣病の患者数を現状比80%減少させるための、国民の食生活並びに食に関する政策を考える」


課題に沿った政策を各班で立案し、どちらの政策が理想の社会を実現するのに有用であるかを競う形でのディベートを行いました。

以下、各班が挙げた政策です。


家庭科のプログラム改善と地方自治体の食育プログラムの実施推進

 調理実習のプログラム改善を行うことで、家庭科の授業をよりアウトプット中心のものとす

 る。また、地方自治体の食育プログラムを小さな子どもの親向けに行い、食事への意識改革

 を目指す。


「子どもも親も一緒に学ぼう!お食事参観プロジェクト」

 公立小学校において授業参観の際に食育の授業を行う。子どもだけでなく、その親、地域住

 民を含めた幅広い層に食育を行う。


妊婦に向けた食育推進

 出産に伴う入院時に病院で保護者向けの食育をする。具体的には、出産に関するパンフレッ

 トに加え、食育に関するパンフレットの妊婦の方々への配布、管理栄養士による食育授業な 

 ど。


食育基本法の改正

 現在枠組み的な内容しか定められていない食育基本法を改善し、小中高生への食に関する社

 会化見学、体験を必修化する。農業体験、工場見学を通して子どもたちの食への関心を高め

 る。民間企業をこの事業に参入させることで企業間競争を生み、サービスのさらなる充実、

 親世代へのサービス拡大を狙う。


農林漁業体験の推進

 地域の食育団体のネットワーク化により地域に根ざした食育活動を支援し、農林漁業体験を

 通して食や農業への理解を深める食育活動を展開する。この活動では生産者の指導を受けな

 がら生産から消費までの過程を学び、生産の苦労や喜び、食の大切さを学ぶことを目的とす

 る。


学校給食を中心とした食育の普及

 学校給食を中学校まで義務化し、その上で栄養士監修のもと食育の授業を行い、実際に生徒

 たちに献立の作成をしてもらう。給食の献立をカラー冊子にまとめて各家庭に配布すること

 もあわせて行う。


企業による社員の生活習慣改善支援

 人間ドックを受診しない社員の給料を下げる規定を作ることで人間ドック受診率を高める。

 人間ドックで生活習慣病が発覚した社員に対しては運動、食事改善プランを企業が提示す

 る。そのプランの達成度に応じて企業が治療費の一部負担を行い、生活習慣病改善に向けて

 努力する社員が報酬を受け取る仕組みづくりを行う。


ジャンクフードへの特別課税

 厚生労働省、もしくは「特定保健用食品(通称:特保)」の認定を行っている消費者庁が市場

 に流通する食品の調査を行い、砂糖・塩分・脂肪分の適正摂取目標値を超える食品に特別税

 を課す。


コンビニ・スーパーでの商品陳列方法の改善

 スーパーやコンビニに、全陳列商品のうち25%を低カロリー、低価格な弁当や惣菜にする

 ことを義務付ける。また、野菜などの生鮮食品に関してはパッケージや包みにその商品を

 使った料理レシピを載せ、家庭での料理を推進する。


企業による社員への朝食・昼食提供サービス

 社員食堂でバランスがとれた食事を安価で提供する。社員が日々食べたものを個人データと

 して蓄積し、偏食の激しい社員に対してはメニュー選択に制限が入る仕組みとする。また、

 食事代を給料から天引きする制度も推進し、手持ちのお金がなくても気軽に社員食堂で食事

 を取ることができるようにする。


健康志向の外食産業育成

 タニタ食堂を例に、低カロリー・低脂質・低塩分の栄養バランスの良い食事を提供する外食

 産業の育成を提案。政府主導でこのような取り組みを地方自治体に推進し、栄養バランスの

 良い食が全国各地に普及することを目指す。


児童による給食づくり体験

 小中学生の給食を年に1度1週間程度停止する期間を設け、その期間は児童による給食づく

 りを行う。それまでの間は、週に1度のペースで正しい食事や生活習慣病についての授業を

 行ったり、学校の畑での野菜の栽培、農家に出向いて給食に使う食材の取引などをさせたり 

 する。更に給食停止期間に向けて班でメニューを考え、よりバランスのとれた給食の調理を 

 目指し、コンペ形式で競い合う。

リフレクションも今年度5回目ということもあり、ディベートに慣れてきた後輩が勇ましく議論していた姿が眩しかったです。

ディベートの反省点としては、

・お題の定義づけをしっかりすること

・論理性・実現性・影響力という3点をアピールするような立論をつくること

等が挙げられました。

これはディベートであるので、審判の目を意識して理路整然とした「口論」を目指すべきだったと思います。



どんどん便利になっていく現代で、日本の「食」から「伝統」や「健康」が失われてきているという問題意識から始まった今回のテーマ。


事実、日本の医療費は年間約30兆円。そのうち3分の1が生活習慣病で約10兆円もかかっているそうです。


あなたは自分の受けてきた「食育」を胸を張って誇れますか?

今回のテーマで学んだ「食事」は、社会への影響力が感じられにくいテーマだという認識がサークル全体でもありました。生活習慣病患者が増加していることは事実ですが、目まぐるしく変化し、様々な事象が絡み合う社会の中で、本当に健康問題の原因は今の食事形態なのか。

しかし食事がきちんとしたものでないと、人間が健康でいられないことは事実です。

食事以外の原因もあるから、と言い訳を作って妥協せず、自分の人生や健康における「食事」の重要性を感じることが今回のリフレクションの意義だったのではないかと思いました。


文責 鎌田明里