4月8日、日吉キャンパスにて「若者のグローバル志向」というテーマのもと、太田英基氏をお招きして新歓講演会を行いました。
グローバル志向という言葉が広く浸透し、日本に居ながらも海外を意識せざるを得ない環境となっています。英語教育義務化や政府主導の留学推進など、様々な策が講じられており、次世代社会を担う学生は早くにグローバルな志向を身に付け、自身の可能性を広げる努力が求められています。しかし、実際には海外に行くことや語学習得そのものが目的になることが多く見受けられます。そこで、大学生がグローバルな視点を持つ必要性やグローバル志向の本質について考えました。
「大学に入れば、やりたいことが見つかる」と言われたことがあるかもしれない。しかし、実際にはそう簡単にはいかない。大学に入ればなんとかなるという受け身の姿勢ではなく、自らチャンスを作り出そうとする自主的な姿勢が大切である。若い時は失敗しても失うものはないので、自分の可能性を信じて、やりたいことにどんどん挑戦してほしい。そして、大学生という身分の特権を有意義に活用してほしい。例えば、社会人なら簡単には会えない人でも、学生だからという理由で時間を作って下さる場合もある。大学生活は4年間しかないのだから、大学生でなくても出来ることではなく、大学生でなければ出来ないことに時間を割いてほしい。また、今やりたいことが見つかっている人は、本当にそれでいいのかを考えてみてほしい。学生から見えている世界は、実際の世界のほんの一部に過ぎない。色々な人に出会いながら、自分の世界の範囲を広げていき、そこからやりたいことを見つけるというやり方もある。また、やりたいことを見つけたらすぐに行動に移せるよう、やりたいことを実現するだけの自信と能力を身に付けておくと良い。
恩師から「経営が、グローバルに展開していくとはどういうことか。」という質問をされた時、「東京、名古屋、大阪で成功したら、アジアに進出する、アジアでも成功したら欧米やアメリカに進出することだ。」と自信満々に答えた。しかし、恩師から「その解答は、グローバルという言葉を全く分かっていない人の解答だ。」と言われ、動揺した。恩師の答えは、「良いアイデアがあるとする。そのアイデアは日本では必要とされないが、ブラジルでは必要とされるかもしれない。そのアイデアを誰がどこで必要としているか、どうしたらそこへ届くのかを考えることが重要なんだ。」というものであった。恩師の言葉によって、初めは誰かの役に立つものを作りたいと考えていたが、無意識のうちに日本人の役に立つものを作ることに焦点を当てている自分自身に気づくことができた。
世界で活躍できる人とは、臨機応変な対応力や人々を許容する力、英語を含むコミュニケーション能力を持つ人である。しかし、1つの秀でた能力を持っている人より、武器になる能力を多く持つ人の方が活躍できる。「日本はモノ(サービスやプロダクト)よりも、ヒト(営業、マーケティング)で大敗している」という言葉は、日本の経営状況を的確に述べている。日本人は、高度な技術やきめ細やかなサービスには定評があるにも関わらず、世界規模でみると大幅に損をしている。
日本人が英語を話せないのは、英語が話せないと良い仕事に就けない発展途上国の人々と異なり、英語が話せなくても収入が高い会社に就職出来てしまうからである。確かに、日本人は英語が話せなくても生活に支障は出ないかもしれないが、行動範囲が大幅に制限されてしまう。語学などを含め、「やらなければならないことは、やりたいことを通して実現する」ことが一番である。すなわち、「Must+Want=Best」である。私は、「世界で活躍する人になる」というVision(Must)を達成するために、語学を磨き、世界を知り、世界中に友達を作ることが必要だと考えた。そして、そのVisionは、世界旅行という自分がやりたいこと(Want)を通して解決できると気づき、実際に実行に移した。
フィリピンに行った時、カフェにいた三人の若者の会話に耳を疑った。なぜなら、彼らが、次はどの国のどの会社で働くかを議論していたからである。彼らの頭の中にはニューヨーク、ロンドン、東京などの世界が視野に入っていた。また、日本人の友人の「やりたいことが、ロンドンで一番出来そうだったからロンドンに来た」という話や、「優秀な人は長い間同じ土地に留まっているのではなく、どんどん活動拠点を移していく」という話を聞いて、私は非常に衝撃を受けた。日本人は、日本国内で物事を完結させようとする傾向が強いため、「頭の中にある日本地図を世界地図に塗り替える」べきである。すなわち、世界に目を向けて、自分が活躍する舞台を探そうと心掛けるべきである。
Q1.起業する前に、会社に就職して経験を積もうとはお思いになりませんでしたか。
A1.私の場合、やりたいことがあり、それをやれるだけの時間や一緒に仕事をしたいと思う友人がいた。知人には、社会に出てから起業して成功した人もいるし、会社によって雰囲気や風土が異なるので、起業する前に一度会社に就職するのはあまり意味がないと考える人もいる。どちらが良いとは言い切れないが、本気でやりたいと思うことがあれば、実行するということが大切だと思う。
Q2.2年間世界一周の旅をしたとお話になりましたが、旅行先の国を選んだ基準や面白いと思った国を教えてください。
A2.BRICsやNEXT11、VISTAなど、これから経済発展が期待できる新興国や日本とは全く社会システムが異なる国には絶対に行こうと考えていた。また、せっかくの世界一周旅行であり、次はいつ行けるのか分からないので、観光名所にも行きたいと思っていた。例えば、インドでは500円くらいの宿を探していたのに、自分の泊まった宿は1000円程かかった。最初は観光客だから宿泊費を多めに取られているのではないかと思ったが、インドでは富裕層が全人口の5%程、人口にして6000万人もいる。ホテルに泊まれるような人はほとんどが富裕層であり、インドには安いホテルはほとんどなく、むしろ自分の泊まった宿はインドの中でも格安宿であったことを教えられた。その時、インドをステレオタイプとして捉えていたこと、貧富の差が激しい国においては統計における平均値などは全く参考にならないことを学びました。
Q3.起業するのに必要な能力は何ですか。
A3.起業と経営は別物である。経営するためには、人、材料、お金、情報が必要だが、起業するために必要なのは、アイデアと情熱と覚悟だと感じる。
Q4.自分を支えている信念はありますか。
A4.社会に対する信念は、世界を舞台に活躍する人をサポートすること。自分に対する信念は、やりたいことをやりたいようにやって生きること。
今回の講演で、太田様は新入生に向けたお話をして下さいました。1年生はこれから学生生活を送るにあたり、とても役に立つ貴重なお話を伺うことが出来ました。また、2年生は、去年の自分の行動を振り返り、新たな気持ちで新生活をスタートさせるきっかけをいただきました。 また、個人には「Must+Want=Best」つまり、「やらなければならないことは、やりたいことを通して実現することが一番である」という考え方に共感しました。何か目標を達成しようと思ったとき、力が入ってしまうことがあります。しかし、「好きこそものの上手なれ」という言葉通り、楽しんだ方が成長が期待できる上、目標も達成しやすいと感じました。
今回ご講演いただきました太田様、本当にありがとうございました。
文責 氏江 優希子