2015年度 春合宿③

一億総活躍社会 ~子育て支援~

東浩司氏(株式会社ソラーレ代表)


 2月10日、春合宿にて「夢を紡ぐ子育て支援~希望出生率1.8~」というテーマのもと東浩司氏をお招きして勉強会を行いました。

略歴


 1971年生まれ、大阪大学人間科学学部卒。富士ゼロックス、ワタミ、東京電力などの転職を経て、36歳で長女を生まれたのをきっかけに研修講師として独立し、株式会社ソラーレを設立。ワークライフバランス、メンタルヘルス、男性の育児をテーマに企業や自治体などで研修セミナーを行う。また、2009年に日本初の父親学校「ファザーリングスクール」を立ち上げ、各地で「笑っている父親」を増やす活動をしている。

「いい父親」ではなく「笑っている父親」へ


 東氏は大阪大学人間科学部卒業後、富士ゼロックス総合教育研究所、ワタミ、東京電力グループなど数々の転職を経験。長女の誕生をきっかけに働き方を見直し、独立されました。ご自身で起業された株式会社ソラーレでは研修講師として働く一方で、NPO法人ファザーリングジャパンでは理事をなさっています。「よい父親」ではなく「笑っている父親」を増やすこと、これは東氏の目標でもあり、ファザーリングジャパンの大きな理念の一つでもあります。大人が生き生きと暮らしている姿を見て子供たち、つまり、次世代の人間は未来に明るい希望を抱くのではないか。より大きな視点でみると、企業や社会全体の意識改革につながり、10-20年後の日本に大きな変化を与えるのではないかということでした。

あるべき父親像の変化


 昨今の社会では「イクメン=育児を主体的に行う男性」という言葉は、テレビなどのメディアでも見かけるほどに社会に浸透しつつあります。昔は父親は一家の大黒柱であり、絶対的存在でした。しかし、時代や社会が変わるにつれ、家庭の中での父親の在り方も少しずつ変化してきました。一昔前までは「企業戦士」と揶揄されるほど、日本の父親はひたすら経済的側面でのみ家庭を支える存在でした。しかし、現在ではイクメンという言葉が流行語大賞にノミネートされるほど男性の育児への関与が積極的に説かれるようになりました。

少子化の最大の原因


 日本の少子化の原因が出生率の低下にあることは明らかですが、より根本的な原因としては「未婚率の上昇」が挙げられます。数年前に比べ男性の平均年収が減少したことや、独身女性の理想の男性像が現実とかけ離れていることなど理由は様々挙げられます。しかし、その最大の要因は、この日本企業の育児への無関心さなのではないでしょうか。東氏も東京電力勤務時代、残業と育児という二つの選択の中で葛藤があったということを話されていました。社会全体が育児への関与を推進していくこと、これが少子化の改善にもっとも有効な手段なのではないでしょうか。

東氏のスピーチ~父親学校を全国へ~


 東氏はご講演の中で、ご自身の夢について語ってくださいました。それは、東氏が日本の父親にもっと輝いてほしいという思いで設立した「父親学校」を全国に広めるという夢です。パパを輝かせることは子供たちを笑顔に、家族を明るく、日本を元気することに繋がります。かつて仕事を転々とし、うつ病になるほど精神的に追い詰められていた中で、生まれた娘さん。この娘さんの誕生が、東氏の生き方を変える契機になりました。娘が生まれ、誰かのために生きる喜びを知った東氏。人生の楽しさを子供に伝えるのは父親であり、そんな父親を増やすため、東氏は父親学校の拡大に尽力なさっています。

質疑応答


Q1.「女性が働く国は出生率が高い」というのは、その国の福利厚生が充実しているからでしょうか。

A1.多くの女性が社会に進出しており、出生率の高いデンマーク・フィンランドなどの北欧は、その特徴が顕著です。日本は福利厚生が充実しているにも関わらず、労働社会全体が未だ男性中心なので、女性が働きづらいというのが現状です。

 

Q2.現在、核家族が家族の形として主流となる中、待機児童などが問題になっている日本。共働きで働いている夫婦の間に子供が生まれた場合、預け先などの問題はどのように解決すればいいのでしょうか。

A2.現状困っている人は沢山います。子供が病気などに罹った時などは、一般的に母親が仕事を一休むことが多いのですが、育児に関しては夫が積極的に関与し、夫婦で乗り切ることが必要だと思います。政治的な面で見ると、投票率などの要因から、高齢者の意見のほうが通りやすくなっています。若者の政治参加もそのような問題解決のカギになるのではないかと思います。

所感


 数々の転職を経て、最終的に研修講師という形で、自分の人生を自由に歩むことに決めた東氏は、どこか自信に満ちていて、まさに「笑っている父親」を体現しているように見えました。自分も正直なところ、家計を支えるために働くだけで、父親としての人生を楽しんでいない日本の父親の姿には疑問を抱いていました。すべての父親は、父親である前に一人の人間であり、それぞれに個人の人生を楽しむ権利があるはずです。しかし、現状ではそのような人が少なく、それを変えたいと願っているのが東氏を含めたファザーリングジャパンの皆さんなのです。私は、このような活動が日本の企業や社会全体を良い方向に導いてくれると信じています。

                                                                        文責:由本達也