5月19日、日吉キャンパスにて第2回事前学習が行われました。これから3週間かけて学ぶテーマは「住まいの未来~資源としての空き家~」です。今回は、比屋根・井上によるファシリテーション形式で、本テーマについての日本の現状と今後の展望を考察しました。以下はその内容です。
総務省統計局の「住宅・土地統計調査」によると、空き家は年々増加し続けており、2013年における空き家数は820万戸にも上ります。特に、山梨県や愛媛県などの地方において、空き家率が上昇しています。そこで、その原因とは何かを議論しました。サークル員からは、空き家率が上昇している原因として「人口減少」、「都市部への人口流入」、「相続放棄」、「高齢化社会」など日本社会の傾向を反映した意見が挙げられました。
空き家は、多くの問題を内包しています。例えば、1.空き家が大麻の工場や遺体遺棄現場とされるなど、犯罪を助長する可能性があること、2.景観を損ね、倒壊や損壊といった近隣被害を生じさせること、3.行政サービスやインフラの効率を悪化させることなどが挙げられます。このような問題を解決するためには、1.空き家自体を解体し減少させる、2.過剰な新築住宅の建設を抑制し、将来における空き家の増加を防ぐ、3.空き家を活用し,空き家を「空き家」ではない状態にするなどの策を講じる必要があります。そこで、政府は、空き家対策特別措置法を制定し、国が指定した空き家に解体費用の補助金を支給する、という対策をしています。しかし、新築住宅が過剰供給されているため、空き家が大量に発生し、空き家数が減少しないという現状があります。サークル員からは、新築住宅が過剰供給されていることついて、「日本人が中古のものより新しいものを好み、新築住宅に住むことを名誉に思うという国民性が影響しているのではないか」という意見が挙げられました。実際、サークル員に「新築住宅と中古住宅、どちらの家に住みたいか」と聞いたところ、半数以上が「新築住宅に住みたい」と回答しました。
空き家問題の解決は、様々なメリットをもたらすと考えられます。中古住宅の価値が見直されれば、自宅を担保にした年金制度の一種であるリバースモーゲージのさらなる普及が期待できます。また、空き家の戸数を減少させることができれば、行政サービスの効率化を図るコンパクトシティに一歩近づきます。このように空き家問題の解決が、より暮らしやすい社会を創造する一助となると言えます。
次回の勉強会では、デザインとテクノロジーを強みに、約200以上の民泊を手掛けるzens株式会社代表取締役CEOの町田龍馬氏をお招きし、理想の社会を「空き家が価値を有する社会」と定義して、空き家問題について考えます。
今回の事前学習を通して、日本人が大量消費行為に慣れ過ぎた結果、空き家問題が深刻化しているということに気付くことができました。増加の一途を辿る空き家問題の解決方法を早急に考える必要があり、空き家問題の一因である「新しいもの好き」という日本の国民性を生かした解決策を考案したいと思いました。
文責 鈴木志野