2016年度 春合宿GroupC

人口減少とこれからの日本~AIと人間のあり方~


 216日、オリンピック記念青少年総合センターにて、GroupCの事前学習が行われました。テーマは「人口減少社会での戦略〜AIと人間のあり方〜」です。今回は、小嶋と田村によるファシリテーション形式で、AIと人間の今後の働き方について考察しました。

現状分析


 日本の労働生産性(GDP/就業者数×労働時間)はOECD諸国34か国中21位と非常に低い現状があります。また、就業時間あたりの生産性を見ても、他国に比べ日本の生産性は低いという調査結果があります。つまり、海外の国々と比較すると、一人がこなす仕事の量は少なく、しかも時間がかかることがわかります。人口減少社会では、労働人口は減少するのに対し、安定した資源供給を続けるために一人あたりの仕事量は増加していきます。そのため、日本の将来において、現在のような効率の低い働き方をしていては、安定した経済成長を望むことはできません。停滞どころか、衰退していく可能性さえあるのです。

 

 

 そのような問題の解決手段の一つとして、AIが挙げられます。現在の社会において、AI技術を職場ですでに活用している企業は38%、まだ活用していない企業が62%と、活用していない企業が過半数を占めています。 一方、今後AI技術に依存したソリューションを採用しようとしている企業は全体の88%にものぼります()AIによる経済効果は十分に認識されているものの、実際に取り入れている企業ば半数にも満たないのが現状です。しかし、取り入れた企業が業務効率化を進めていることを考慮すると、これから続々とAI技術を取り入れる企業が増加すると考えられます。

 

※参考資料:readwrite2017年度、企業AI普及率は88%を超えるか」2016.8,14(http://readwrite.jp/trend/32675/)

AI技術を利用した労働と今後の雇用


 AI技術を利用した労働は、人間の労働よりもスピードが速く、ミスも少なくすることが可能です。さらに、人件費が掛からないため、安価で商品を提供することができ、生産が安定するというメリットがあります。一方で、トラブルが起きた際にどのような行動を取るかわからない危険性、責任の所在が曖昧であることなどがデメリットとして挙げられます。中でも深刻なのは、人間の雇用が減少し、失業者が増加するという問題です。2014年のオックスフォード大学の研究によれば、ここ1020年の間に、約半数の仕事がAIにより奪われると予測されています。以上の理由から、AIの活用に関する意見は、賛成と反対が半々であり、人々が判断に迷っている様子が伺えます。また、先ほどのオックスフォード大学の研究から、将来消える職業だけでなく、消えない職業も知ることができます。消える職業は、マニュアル化された一般事務員、駅員、レジ係などの職業です。対して、消えない職業は、教師、作曲家、俳優などの抽象的な概念を創出したり、他者との協力が必要とされる職業です。将来消える職業と消えない職業を比較することで、AIにはない、人間の強みを知ることができます。従って、将来AIが台頭した際、人間に求められる行動は、人とのコミュニケーションをより多くとること、創作活動を盛んにすることであると考えられます。このように、今後はAIと人間の間で分業が進んでいくと考えられます。

勉強会に向けて


 AI技術について、私たちは「AIが雇用を奪う」というネガティブなイメージを持っています。しかし、反対に「人間がやりたくない仕事をAIに任せることができる」というポジティブな考え方をすることもできるのです。次回の勉強会では、機械化不可能と言われてきた煩雑な事務作業を機械化することに成功された大角氏をお招きし、AIを活用することのメリットに加え、AIと人間のこれからのあり方について熟考していきます。

所感


 人口減少、少子高齢化を考慮すると、労働生産性の向上は早急に取り組むべき課題と言えます。しかし、全てをAIに任せ、人間から仕事という生きがいを奪った社会は、たとえ経済が発展していようと、健全でないように思われます。私は、「科学が人間の生活にどこまで介入してくるのか」ということに懸念を抱きました。世間一般の人々も同様にAIの導入を決めかねているようですが、人間は便利なものに目がないので、AIはこれから急速に社会に浸透していくと思います。それをネガティブに捉えるにせよ、ポジティブに捉えるにせよ、AIと人間の差別化を図ることが大切になると思いました。

 

                                                      文責:田村莉乃