12月2日、日吉キャンパスにて第6回事前学習が行われました。これから3週間かけて学ぶテーマは「食から見た社会~人を良くする“食”~」です。今回は、今西と齋藤によるファシリテーション形式で、世界の食糧問題と、生産・流通・販売・消費の4つの段階における日本国内の食に関する問題を考えました。以下はその内容です。
食べ物を指す言葉に、「食料」と「食糧」があります。どちらも同じ読み方であり、混同されることが多い言葉ですが、両者には違いがあります。「食料」は、食べ物全般、あるいは主食以外の食べ物を指します。一方、「食糧」は、米・麦・トウモロコシなどの主食を指す言葉です。
現在、世界には約7億9500万の飢餓人口が存在し、73億人の9人に1人が飢餓に苦しんでいます。飢餓になるのは、食糧が十分に作られていないからではありません。なぜなら、現在では、世界中の人が生きていくのに必要な量の約2倍にあたる、年間24億トンの穀物が生産されているからです。問題は、世界の2割足らずの先進国の人々が世界の穀物の半分以上消費しているということです。
また、世界の人口は増え続けており、73億人(2015年)が、2050年には97億人になると予測されています。増加の一途をたどる人口に見合う食べ物を確保するためには、今よりも1.7倍の増産が必要になると言われています。
現在、日本の食料自給率は減少傾向にあり、カロリーベースで約6割、生産額ベースで約3分の1の食料を、世界から輸入しています。しかし、私たちは年間5500万トンの食糧を輸入しながら、約1800万トンの廃棄を行っています。この廃棄量は、3000万人分(途上国の5000万人分)の年間食料に匹敵すると言われています。このような日本国内の食糧問題を深く考察するため、生産・流通・販売・消費の4つの段階における問題について考えました。
サークル員からは、「海外の農作物との価格競争や天候による収入の不安定さが、後継者不足の原因ではないか。」という意見が挙げられました。また、「国産と名の付く食品の方が高く売れるという理由で、産地偽装問題が生じる。」という意見も挙げられました。さらに、原発事故による風評被害が根強いことについて、「福島県だからという理由で、福島県産の農作物を買わないのは良くない」、「放射線の影響を受けていないという情報がなければ、福島県産の農作物を食べるのは怖い」などの意見が交わされました。
サークル員からは、「大手企業が一度東京などの首都圏に農産物を集めてから、各都道府県に配送し直すことで、食品のUターン現象が生じている。」という意見が挙げられました。食のUターンは、農産物の鮮度の低下、ガソリンなどの燃料の無駄遣い、長距離輸送による運転手の負担の増加を引き起こします。また、「加工技術の発達や大手企業と農家の直接経営化により、卸売り企業が衰退している。」という意見も挙げられました。低価格で食品を提供できるため、企業や消費者にとっては卸売り業者を通さない方がプラスになりますが、卸売り企業の方々が職を失うという問題があることが分かりました。
サークル員からは、「規格外商品の廃棄や売上至上主義により、フードロスが生じている。」という意見が挙げられました。規格外商品を買い取り、低価格で美味しい料理を提供する食堂が例示され、食料廃棄問題を解消しようという試みがあることを知ることができました。また、「価格の安定化を実現するための農薬の使用と、消費者の無農薬食品へのニーズの高まりの間で、農家の方々が板挟みになっている。」という意見も挙げられました。さらに、農家に投資をして利益だけを得るという大企業だけが儲かる仕組みを問題視する声も上がりました。
サークル員からは、「経済が発展するに伴い、職場と住居が同じ場所にあるという職住一体型から職場と住居が離れているという職住分離型へと変化し、職場の近くで食事を済ませるため、外食が増加した。」という意見が挙げられました。消費は、4つの問題の中で1番私たちに密接な問題であり、孤食、生活習慣病の蔓延や低年齢化など日常の様々な問題と関連性があるということが分かりました。
テレビで、野菜の価格が安い時に野菜を大量に購入しストックしておくという方法を紹介した際、農家の方から、「野菜の価格が高騰しているが、ギリギリの状態で農作物を作っているので、野菜を購入してほしい。」という趣旨のFaxがテレビ番組宛に届いたという話を聞いたことがあります。自分がほしい物は大金を払ってでも購入するのに、野菜は少しでも値段が高くなれば購入しなくなってしまいます。もちろん、野菜の価格高騰は家計に大きな影響を及ぼすというのは重々承知ですが、自分たちのことだけではなく、生産者である農家の方々のことを考える必要があると思いました。この話に限らず、フードロス問題や規格外商品の廃棄などは、消費者が生産者の気持ちを軽視することから生じるのだと思います。また、生産者や販売者のことを理解するためには、自ら動き出す必要があると思いました。
今回の事前学習で学んだことをもとに、「勉強会」「リフレクション」を通じて、さらにこのテーマについて理解を深めていきます。次回は「2025年までに、生活習慣病の患者数を現状比25%減少させるため、国民の食生活並びに食に関する事業プランを考える」というテーマのもと、ディベートを行います。
文責:氏江優希子