第3回事前学習

開発と生物多様性


6月17日、日吉キャンパスで第3回事前学習が行われました。これから3週間かけて学ぶテーマは「開発と生物多様性」です。今回は今西と齋藤によるファシリテーション形式で、本テーマについて考察しました。以下はその内容です。

自然環境に関する諸問題


 今回のテーマを考えるにあたり、自然環境に関する問題についての検討を始めました。サークル員からは、「地球温暖化」が原因で起こる「海面上昇」や「異常気象」、「酸性雨」、「公害」、「森林伐採」の影響による「害獣被害」「生態系の変化」などの問題が挙げられました。これらは、いずれも人間の活動が大きな影響を与えている問題であることが分かります。

生物多様性


 今回のテーマを考えるにあたり、生物多様性の定義について確認しました。生物は、長い時間を経て姿や暮らし方を変え、様々な環境で暮らせるように進化してきました。その結果、地球には現在174万種を超える生物が存在し、お互いに関わりあって暮らしています。こうした全ての生物の個性や生物同士の繋がりを表した言葉が「生物多様性」です。生物の多様性が保たれることにより、安定した生態系サービスを享受できるだけでなく、生物資源や遺伝資源の利用可能性が高まるため、人間にとっても重要なものであるといえます。

生態系サービス


 生態系サービスとは、人間が生態系から得ている利益のことであり、「自然の恵み」とも言い換えられます。この生態系サービスは、生物多様性によって支えられており、食料・水・遺伝資源などの「供給サービス」、気候調整・水質浄化などの「調整サービス」、生息・生育環境の提供などの「生息・生育地サービス」、自然景観の保全・観光などの「文化的サービス」の4種類に分類することができます。

 次に、なぜ生物環境や生態系が破壊されてしまうのかをグループで話し合いました。一番多かった意見として、生態系サービスの需要側である人間が、恩恵を意識しづらいということ(空間的トレード・オフ)、被害を受けるのは未来世代であり現代世代には関係のない問題とみなしていること(時間的トレード・オフ)が挙げられました。

開発の意義・影響


開発の意義と影響について考えるため、人間が開発を行う理由と、開発に起因する問題についてグループで議論しました。開発を行う理由としては、「経済成長のため」「人間の生活を便利にするため」という意見が挙げられました。しかし、人間中心の開発を行うことにより、生態系のバランスに悪影響を及ぼすなどのデメリットも生じます。狩猟規制を廃止するという人間の決定も生態系に影響を及ぼすという事例から、人間も生態系の一部であり、人間の活動は私たちが思っている以上に生物多様性に影響を与えていることが分かりました。

開発と生物多様性の両立


 ファシリテーターの「開発と生物多様性はどのように関連しているのか」という問いに対して、開発と生物多様性の各々のメリットとデメリットを考えた上で、グループディスカッションを行いました。開発は、経済成長が見込めるという長所がある一方、自然へ悪影響をもたらし、公害という形で人間も含めた生物全体に対して害を与えるという意見が挙げられました。

 また、以上の議論を踏まえ、開発と生物多様性を両立させるために、個人・企業・国レベルで何ができるのかをグループで話し合いました。「先進国と発展途上国で規制のレベルを変える」「教育により次世代に現状を知ってもらう」「クリーンエネルギー事業を主導することが必要」「政府が企業にリサイクルを行うように働きかける」といった意見が挙げられました。これに対し、「国ごとに規制のレベルを変えても先進国は取り決めを守らないのではないか」「教育による効果は薄く、強制力がないのではないか」といった反論もなされました。

所感


生物多様性は人間を含めた全生物にとって有益なものと言えます。しかし、資本主義社会に生きる現代人にとっては、経済成長も欠かすことのできない大切な営みです。経済成長のために開発を行うほど、生態系のバランスは崩れてしまいます。開発に起因する問題の責任は、開発を行っている現役世代にあるため、私たちはこの問題を身近な問題として考えていく必要があると感じました。

 

今回の事前学習で学んだことをもとに、「勉強会」「リフレクション」を通じて、さらにこのテーマについて理解を深めていきます。7月1日、株式会社プロット専務取締役の原田祐介氏をお迎えして、ご講義いただきます。

 

文責 鍋田真結子