2012年度 第3回事前学習

グローバル人材の育成


 今後3週間は、「グローバル人材の育成」についての理解を深めます。6月22日のCase study は、1班4人のグループに分かれてディスカッションを行う形式で進められました。


グローバル化と日本社会


 近年の急速なグローバル化を受けて、国内企業は海外企業と互角に戦える国際競争力を要され、世界で活躍できるグローバル人材の育成が求められています。同様に、現代日本が抱える問題である少子高齢化は、人口減少に繋がり国内市場の縮小を招くため、国内企業には国外市場への進出が求められます。そこで、グローバル人材育成を教育システムに導入するために、2011年4月から小学5、6年次には週1回の外国語(英語)活動が必修化されました。文部科学省による意識調査によれば、小学校における英語教育の必修化は保護者から多くの期待を集めている一方、教員の間では否定的な見解が見られます。では、今後のグローバル社会を生き残るためには、どのような人材育成が行われるべきなのでしょうか。


グローバル化人材育成のためには


 ここからは、3つの質問に対して各班でディスカッションを行った後で全体と共有を図りました。まず、自分たちが考えるグローバル人材についての考えを挙げました。


質問① グローバル人材とはどのような人材のことか

    またグローバル人材に求められる能力は何か。

・最終的に語学力がなければ他国を理解しきることは不可能ではないか 。

・グローバル人材に最も必要なのは語学力以上に愛国心や自国の知識、そして相手(国)を受け入れる柔軟性である 。

・自分から発信し国際規模の物事を動かすためには主体性が最重要である 。

・相手を認め、受け入れるだけではなく多様性を尊重する力が必要である 。語学力については、異文化を理解する上でのツールとして必要であるという意見が出た一方で、語学力を身に付ける前に、柔軟性や行動力が素養として重要であるとの意見もでました。

 

 ここで、文部科学省によるグローバル人材の定義を全体で確認しました。

1、語学力やコミュニケーション能力がある。

2、主体性、積極性、柔軟性、責任感がある。

3、異文化に対する理解と自国に対する誇りがある。

 

 質問①で挙がった意見と重なる部分が多いように見られるものの、上記の定義は日本国内で共有されている定義に過ぎず国際的にはどのように捉えられているのか分からないのでは、という指摘がありました。

 

 次に、それぞれのグループに配られた表についての質問が出されました。グローバル人材の採用を積極的に実施しているとする企業(以下、実施企業と表記します)と、そうでない企業(以下、未実施企業と表記します)、2種類の企業を対象とし、それぞれが考える「グローバル人材となるために必要な資質」を項目にして順位を付けたものです。

 

質問②-a 資料の表から読み取れることは何か

 

・実施企業が英語力を3位に挙げているのは、グローバル人材が高い英語力を持っていることを当たり

前として考えているからではないか。  

・英語力は会社に入った後にもスキルアップ可能である一方、チャレンジ精神や異文化理解力は入社

後に養成することが困難であるため、実施企業は求める資質の1位、2位にそれらを挙げているのでは

ないか。  

・未実施企業が個人の発信力を重視するのに対し、実施企業は社員が企業の一員として協調的に働け

ることを重視している。

 

 ここで、韓国出身のFrontRunnerメンバーに、韓国の就職活動において英語力がどのように扱われているかを話してもらい、全体で共有しました。

 

質問②-b 韓国において求められるのはどのような人材か

 

 メンバーによると、韓国は国内市場が非常に小さく、多くの企業は国際市場において競争優位を勝ち取る必要があるそうです。そのため、英語力は社会に出る上での必須条件であり、英語を身に付けなければ職に就くことは難しいとのことでした。  

 

 同じアジアという地域に位置している韓国と日本であっても、求められる人材の資質には違いが生じています。このように、世界においては、経済面、政治面などの異なる背景によって、国ごとに必要とされている資質は様々であると言えます。

 

 最後に、今年度から実施された小学校での英語教育について、議論を進めました。

 

問③ 小学校での英語の必修化に対して、教員が否定的で保護者が肯定的なのはなぜか

 

 文部科学省が行っている小学校の英語教育に関する意識調査によると、「小学校で英語教育を必修化すべきか」という問いに対して「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と答えた教員の割合は、全体の約36%に留まったものの、保護者の割合は全体の約70%にのぼりました。教員側、保護者側それぞれの立場に立って原因を考えました。

 

<教員> 

・小学校教員はすでに一人でいくつもの教科を担当しているため、それに加えて新たに英語の勉強を行うことで負担が増えると感じている。  

・人員配置や教員の教育に対して必要となるコストを考えた際、消極的になる。  

・英語教育に対する成果が上がらなかった際の、保護者からの反応に不安を感じている。  

 

<保護者>  

・義務教育として、お金を払わずに子供に対して英語の教育ができるなら実施してほしいと考えている。  

・保護者は子供の就職活動を心配しているため、早い段階からの英語教育に賛成している。

・自分たちが英語に苦手意識を持っているのは小学校からやっていなかったからかもしれないという漠然とした考えが保護者の中にあるのではないか。 生徒に対する英語教育の責任を負う教員と子供の将来を案じる保護者との間で、異なった見解が得られたようです。

 

 以上を踏まえて、最後に発表された再来週行われるディベートの議題は「日本は英語を公用語に指定すべきであるか否か」です。この場合の「英語を公用語に指定」とは、英語を日本の第一公用語とすることを意味しています。


 来週は松香洋子様をお招きし、日本の義務教育のあるべき姿や、グローバル人材についてお話しいただきます。今回各自が抱いた疑問点や意見を松香様に発信し、より有意義な時間としていきます。 以上です。


文責:森嶋裕子、中山遥