今回の定例会では、事前学習や奥山千鶴子様の講義を通し深めてきたテーマである「待機児童問題と幼児期の空洞化」について、ディベートを実施しました。
今回のディベートテーマは「保育事業に関する規制緩和は、幼児教育にとってプラスであるか否か」です。現在は、右肩上がりの保育所ニーズと、それに伴う保育所の増設・定員拡大が行われています。しかし、保育士の増加や保育所の増設は、子どもの視点から見たとき、幼児教育にとってプラスであると言えるでしょうか。私たちは、そのような疑問を抱いたため、上記のテーマを設定し、ディベートを通じて理解を深めました。
また、「保育事業に関する規制緩和」によって生じる結果として、「保育所の増加・保育士の増加」という2つの論点をもとに、議論を進めていきました。つまり「保育所/保育士の増加は幼児教育にとってプラスか否か」について、議論を展開していきました。
〈保育所増加の観点から〉
・規制緩和により、非営利組織だけでなく、民間の株式会社の保育関連事業への参入が見込まれ、待機児童が減少することが期待される
・保育事業に関するノウハウを有している企業が、保育関連事業に参入することにより、より質の高い保育を実現させることが可能である
・公費が投入される認可保育所が増加することにより、保育料が低下することが見込まれる
〈保育士増加の観点から〉
・認可保育園の保育士が増加することにより、認可外保育園に比べ給料が高く、労働環境も良いため、保育士の離職率が低下することが見込まれる
・上記の効果として、幼児は経験豊富な保育士のもとで、国が設けた基準をクリアした設備環境で過ごすことが可能である
〈保育所増加の観点から〉
・現行の保育所や新設の保育所は補助金がもらえる認可保育所を目指すことが予測され、それにより保育形態の多様性が失われる
・上記の結果として、保育時間延長、病気を抱える幼児に対する保育、一時保育受け入れに関する対応が困難となることが予想される
〈保育士増加の観点から〉
・規制緩和という形で保育士の数を増やすことは、保育の質の低下を招くことが見込まれる
・資格要件が緩和されることにより、容易に保育士になれるというイメージが定着する恐れがあり、その結果として自らの職に誇りを持てない保育士が増え、勤務姿勢に悪影響を及ぼすことが考えられる
保育事業は、一般的に女性の社会進出と結び付けて捉える機会が多いと思います。しかし、今回はそうではなく、「保育を受ける子ども」の視点を重視するものであったため、非常に新鮮さが感じられました。さらに、幼児教育の様々な課題に対しては、その質と量の2つの側面から理解していかなければならないことを改めて強く実感しました。
文責 南部久翔