今回の定例会では、Case Studyや小笠原氏による講義を通し深めてきたテーマ、日本におるスポーツと国民の関係について、6班に分かれディベートを実施しました。それぞれのディベートには2名ずつジャッジをつけて判定を行いました。
肯定・否定はあらかじめ決めるのではなく、ディベート当日にくじ引きによって決定されます。準備の段階で肯定側と否定側それぞれの立場に立ち、偏りのない視点から論題を考察することを目的としています。
論題
「日本政府はマルチサポート事業への投入資金をさらに増やすべきか否か」
以下、肯定派否定派において挙げられた論点です。
肯定側
・増資による選手のモチベーションアップ。
選手の活躍に見合った強化費用を出すことで選手のモチベーションが上がり、さらなる活躍につながる。
・メダル獲得数の増加による選手レベルの底上げ。
メダル獲得によってその競技の人気が上昇すれば競技人口が増加し、若い世代からのレベルの底上げにつながる。
・他国より少ない投資額の改善。
メダル獲得数上位の国はオリンピック種目の強化を目的として120億ほどの投資をしている一方、日本は28億の投資しかしていない。上位を目指すのであれば、他国と同程度の投資を行うべきである。
・メダル獲得数の増加による経済効果。
ロンドンではリーマンショックなどの影響もありながらメダル獲得によって8000万の経済効果があった。メダル獲得は経済効果に大きく影響し、経済活性化のためにメダル獲得をより推進する必要がある。
否定側
・オリンピックの価値の低下。
年々オリンピックの視聴率は下がっており、これは国民の関心が薄れていることを示している。増資するのであれば、国民の生活に直結する市民スポーツにこそ資金を投入するべきである。
・マルチサポート事業の効果の薄さ。
ロンドン五輪において、マルチサポート事業で支援されている競技の過半数がメダルを獲得出来ていない状態にあり、メダル獲得におけるマルチサポート事業の優位性が疑われる。
・現行のマルチサポート事業見直しによる効果の改善。
比較的メダルの取りやすいボクシングなどのマイナースポーツとされるものに投資を行ったり、女子スポーツへの投資額を増やしたりするなど投資方針の見直しを行うことで、現状の予算であってもメダル獲得数増加の可能性がある。
・市民スポーツの重要性。
スポーツには、リーダーシップの育成や地域交流、人間関係の育成など多くの副次的効果があり、それらを今現在の都市化した日本の問題点を解消するために享受したい。そのために国民の一部にしか割り当てられないマルチサポート事業ではなく、市民スポーツへの投資を促進するべきである。
などの意見が出ました。
今回のディベートでは前回に比べ話し方に改善が見られ、ジャッジにもオーディエンスにもわかりやすい工夫がされていました。また、反駁・質疑も論理的に行われていました。しかし、今回反省点として挙げられたのが、質疑が反駁になってしまっていることや、ニューアギュメントなどのルール確認の不徹底など、ディベートにおける基本的な部分を指摘する声が多く上がりました。 後期が始まり、改善すべき反省点も多く見受けられましたが、サークル全体としては前期の反省点を踏まえ、良いディベートに近づいているという意見もありました。
そしてディベート終了後に「日本にとってスポーツとは何なのか。」 についてディスカッションを行いました。
ここでは、日本にとってスポーツとは競争力育成のためのツールであるという意見が出る一方、競争力を養うのではなく、上下関係などの礼儀、助け合いの心を学ぶための場であるといった意見も出されました。 普段何気なく取り組んだり、観戦したりしているスポーツですが、本タームの学習を踏まえて、個人にとっての、また国にとってのスポーツの在り方を見つめなおすことができたのではないでしょうか。 以上です。
文責:請園薫